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STEP1 Frozen Flare 72

 愛美は、そうでもないと言うように微かに首を振った。


 人のことを疑い出せば、きりがない。


 ザキは、帰ると言って聞かなかったようだが、精密検査の為に一晩入院した。頭を打っていたが、検査の結果は何も問題はなかった。

 それでも数日は、激しい運動などは控えるようにと言われた。


 午後からのライブも問題外だと言われ、里見は昨夜から頭を悩ませていたようだ。


 ザキ自身は何を考えているのか、愛美に当たり散らしたりするだけで、心の内を見せたり泣き言を言ったりはしなかったが。


 どうでもいいことで文句は言う癖に、肝心なことは何一つまともに言わない。


 皮肉ったり馬鹿にしたり、真実心の底から思っての言葉ではないし、愛美の言葉も右から左でどこ吹く風といった感じだ。


 愛美がいないので、今頃は長門をこきつかっている頃だろう。どうして愛美や長門が、ザキの面倒を見なければいけないのだろう。

 面倒なら親が見てくれればいいものを。


 そう思って、ふとシヴァに聞いてみた。

「ザキさんの両親、来ないんですかね?」

 来ないよと、あっさりとシヴァは言った。


「放任主義ってことですか?」

 愛美の言葉に含まれた、何かを感じたらしい。


 シヴァはちょっと笑ったが、真面目な顔になって話し始めた。


「彼のところは凄い厳しいんだよ、お父さんが。音楽なんか聞くのは軟弱な証拠だって、訳分かんないだろう? でもザキは見た目があれだから、男らしく男らしくって育てられて、学校も男子校に無理やり行かされて、ずっとそうやって育てられてきたんだ」


 愛美は思わず、嘘と呟いていた。


 シヴァが嘘じゃないよと言って、そのまま言葉を続けた。

「音楽に興味はあったけど、親はそういうものを認めないから、ザキは作詞するのも、音楽聞くのも親に隠れてやってたって。もちろん、学校辞めるなんて許さなかったし、デビューだって駄目だって言われてね。凄い大揉め。最終的にザキが家出同然で、親と絶縁になったって訳」


 だから心配はしてても来ないねと、シヴァは言いきった。


「認めないって、そんなの人の勝手でしょ。自分の価値観を子供に無理やり押しつけて、認めない? そんな横暴だわ」

「悪い人じゃないんだよ。自衛官で、今時珍しいぐらい正義感のある人」

 

 愛美は口を開きかけたが、やめにした。


 何も知らない人間のことを、とやかく言っても始まらない。

 愛美はザキのことも、甘やかし放題で育ったものとばかり思っていた。


 しかし親が厳しいという話は、案外すんなりとザキの姿と結びついた。

 ザキの性格が、屈折するのも無理はない。

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