STEP1 Frozen Flare 62
「好きな女だったとしても四六時中一緒なんて考えただけでも、かったるいのに、何であんな訳分かんねー奴とべったりしてなきゃなんねーんだよ」
その気持ちも分かるような……いや、誰の為だと思っているのか。
まあ、あの狭い部屋で長門がボーッと座り込んでいたら、それは嫌だ。
しかし、それもこれも。
「何かあったらどうするんですか?」
ザキはフンと鼻を鳴らすと、愛美の手を振り払った。
「何かあったら、あいつの信用に傷が付くってか?」
愛美は振り払われてもまた、ザキの服の裾を掴んだ。
「元々、そんな信用なんかないわよ。傷ついてとり返しがつかなくなるのは、信用なんかじゃなく、ザキさんよ」
ザキはもう腕を振り払おうとはしなかったが、愛美の顔を見ようともしなかった。
「俺を殺したい奴にはそれこそ好都合ってか。誰だか見てみたいぜ」
愛美は溜め息を吐いて、ザキから手を放した。
「本当に、同じメンバー内で恨みつらみがわだかまっているなら、怖いことよね。お互い、何考えてるかなんて理解はできないけど、どこか信頼があるからこそ、一緒にやっていける訳でしょ」
ザキが愛美の目を、睨むように見た。
お前に何が分かる。そう言われているようだった。
同じ家に一年以上暮らし、こうして今も一緒に仕事をしている長門のことだって、愛美は何一つ分からないのだ。
それでも仲間としての信頼がある。
嫌なものなら沢山見てきた。
愛美がまだ知らない、それよりもっと嫌なものだって世の中には沢山あるだろう。
それでもまだ信じている。信じたいのだ。
ザキにだって、愛美のことは分からないだろう。もちろんザキのことを全て、愛美が理解することもできない。
「いい人ぶっちゃって。化けの皮剥がしてやろうか」
ザキの手が伸びてくる。その時、
「こんな暗がりで、何やってのかな」
と、男の声でそう聞こえた。
ザキが手を止めて、声のした方を振り返った。
「こんな所にいると、悪い人に何されるか分からないぜ」
一人、そしてまた一人。夜の闇から生まれたかのように、路地へと人影が現れる。
俺達悪い人ってことじゃんと混ぜ返す声に、男達の笑い声が弾けた。
「本当ありがたいよな。わざわざ一人になってくれて」
通りすがりの通行人ABCという訳ではない。
その数、十名ばかり。
顔が分からないように皆、目出し帽などで覆面をしている。
ザキは一歩二歩とあとじさって、愛美の横に並んだ。愛美を庇おうという気はないらしい。
「あのデカいのがつきっきりで、手出せなかったんだよな」
つまり、ここ数日はずっと狙っていたということか。




