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STEP1 Frozen Flare 43

 ザキも後は歩いて帰ると言って、里見の運転する乗用車は、三人を夜道にとり残して走り去った。


 十一月にもなると、やはり夜は冷え込む。


 殆ど店らしい店はシャッターを降ろした閑散とした通りの中で、作り物のような白い光を溢れさせた店内は、そこだけが別世界のようだ。


 会社帰りと分かるOLや、サラリーマンが、チラホラと陳列棚を行ったりきたりしている。

 仕事柄、不規則な生活で夜が遅くなりがちなザキも、二十四時間営業のこの店をよく利用しているらしい。


 バイトらしい若い店員は、物珍しそうにザキを見たりはしなかったが、一見少女にも見紛うほどのザキの容貌に見とれているようだ。

 男なら、その気持ちも分からないでもない気もするが……。


 インスタントは嫌だのなんだのザキは言っていたが、コンビニで望み通りの食材が揃う訳がない。


 愛美はマカロニの袋に、パック詰めのホワイトアスパラとマッシュルーム、そして冷凍のミックスベジタブルと、朝食用にパンに飲み物と次々に手にとっていく。

 少し考えた上で、男物の下着と歯みがきセットも入れた。

 長門のお泊まり用だ。


(何で私が、こんなものまで買わなきゃならんのだろう)


 しかし、長門のことだ。


 注意を与えておかなければ食事も、身の回りのことも何一つ構わないような気がする。


 ザキは、愛美の買物には付き合わず雑誌コーナーで週刊誌をパラパラと見ていたが、結局何も買わずに先に出ていった。

 長門もそれにならって店を出ていく。


 愛美はレジで領収書を頼み、細かいのがなかった為に一万円札を出した。

 店員が釣り銭を数えている時、辺りの空気を引き裂くような鋭い車の急ブレーキの音が響き渡った。


 愛美は反射的に、お客さんお釣りと叫ぶ店員を無視して外に飛び出した。買い物をしたものも、レジに置いたまんまだ。


 

 愛美が、自動ドアを突き破る勢いで外に出た時、車が凄いスピードでタイヤを軋ませて走り去っていくところだった。


 思わず数メートル走ったが、テールランプの赤い光は、角を曲がって消えた。



 通りに二人の姿は見えない。まさか拉致されたとか。


 長門ごと?


 愛美は不安な面持ちになるが、すぐにハッとして上を見た。


 アパートか何からしい、一軒屋風の造りの建物を囲む塀に、黒い影が立っている。


 愛美はギョッとなるが、長門は落ち着いた様子でコンクリ塀から飛び降りて、愛美から少し離れた所に降り立った。

 高さは約二メートルほどの塀だ。


 長門は、腕にザキを抱いている。

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