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STEP4 最後の女神 115

 陰陽師なら、キミノの気配に気付かない方がおかしいだろう。


 しかしキミノは、美奈が気付いていながら気付かないふりをしていると言っていた。


 それは、なぜだ。


 愛美は、美奈の次の言葉を待つ。


「一度は、眷属として仕えていた陰陽師の一族」


 美奈は、自分を嘲ることをやめなかった。

夜久野やくの家に嫁いだものの結局、重荷に耐えきれず逃げ出した。愚かな女」


 愛美の背中が、スッと凍りつく。

「夜久野」


 その忘れようにも忘れられない名前の一つを、愛美は繰り返した。


 もう一つは、言わずとも分かるだろうが、上月こうづきという名だ。

 その二つは忌まわしい記憶の象徴として、愛美の中に刻まれている。


 美奈は、愛美の身に起こった出来事を知らないのだろう。


 知っていれば、その名前を簡単に口に出せた筈がない。


 愛美の人生を狂わせた、全ての元凶。

 家族を奪い、友人を奪い、家を奪い、近藤愛美という人間を奪った、最も憎むべき存在だった。


 憎むとすれば、実際に行動を起こした那鬼(綾瀬の弟)や、大和と瑞穂の兄妹を憎むべきだろうが。

 大本は、夜久野の当主が十一年前に、愛美と真名と言う二人の子供をとり換えようとしたことから始まる。


 それすらなければ愛美は一生、夜久野や上月や陰陽師と言うものと関わりを持たずに生きていけた。


 その十六年間、何事も知らずに生きていけたように、それからだって生きていけた筈だったのだ。


 それを自分の孫を助ける為に、何の関係もない愛美を身代わりに仕立てようとしたのだ。


 那鬼がしようとしたことは、本来、上月と夜久野にしか関わりがないことだった。


 滅ぶも滅ばないも、彼らの中だけで始末をつけるべきこと。


 それを関係のない普通の人間まで巻き込もうとしたのは、夜久野の当主だ。


「結婚した時の名前が夜久野美奈。離婚して元の上田姓に戻ったの」


 この女が、夜久野真名の母親なのだ。

 それ以外には、考えられない。


 夜久野真名は確か、物心つく前に両親を亡くしていて、祖母によって育てられたと綾瀬には聞いている。


 そして十一年前、六才だった真名も含めて夜久野の係累は全て絶えた筈だ。


 那鬼達が徹底的にやったのだから、それは間違いないだろう。


 美奈から、昼間の喫茶店で聞いた台詞が、夜久野の人間であったという言葉で、別な意味を持ち始める。


 娘と、家を捨てたと言う告白。


 夜久野の当主、美奈の義理の母親は、子供を捨てて逃げた母親を死んだと言うことにしたのだろう。


 もしかしたら美奈の追い詰められた気持ちを分かって、そう言うことにしておいたのかも知れない。

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