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STEP4 最後の女神 43

 長門はそう言って、如何いかにも訳が分からないと言った表情をした。


 二人の作業員は、扉の上の蝶番を止め終えて、今は下の留め具をつけているところだ。


 長門の低いボソボソした声は、至近距離にいる二人にも届いている筈だったが、愛美達の会話に何らかの反応を見せるようなことはなかった。


 警視庁の警視である沖田が介入してくれたなら、うまくまとめてくれたに違いない。


 長門に絶大な恩義を感じているらしいから、東奔西走して要らぬ気苦労を抱え込んだのだろう。

 御冥福をお祈りいたします――って、勝手に殺してどうする。


 沖田と言えば、昨日、途中で読むのを止めてしまった本では優男として描かれていた新撰組の隊士の沖田総司を思い出すが、刑事の沖田の方はどう見ても優男にはほど遠かった。

 

 敏腕刑事と言うよりも、長門と同じで危ない人にしか見えない。



 新たな扉がつけられ、作業員は問題はないかと、何度か開閉させて見ていた。


 現場検証に来た警官や、銃弾が撃ち込まれた件に関して関わった人々に、長門は一体、何者として認識されたのだろう。


 殺し屋ではあまりにも差し障りがあるから、私立探偵とか特務機関(そんなもの、あるのだろうか?)だと言うことになっているのだろうか。


 私立探偵にしても殺し屋にしてもボディガードにしても、長門はハードボイルドの主人公にはぴったりかも知れない。


 黒革のパンツと白いシャツを無造作に着て違法酒を喰らい、しかもアル中ときていた。


 刹那的な生き方をしていて、本人はそれを異常だとも感じていない。


 その長門を愛美はやつ当たりの道具にして、ことあるごとに怒ったり泣いたりして、その度に困惑させているのだ。


 クールな長門も、愛美のようなわがまま放題の子供には手を焼かされるようだ。


 その様子を考えると、どうも長門のハードボイルドなイメージは崩れてしまう。愛美が、長門のイメージを壊しているのかも知れなかった。


 愛美さえいなければ、長門はハードボイルドな生き方ができるのだ。


 それでも愛美と長門は、SGAを通して出会ってしまった。


 出会う前のような生き方ができないのは、お互い様かも知れない。


「あなたもね、日本人よ」


 愛美は長門に指を突き付けてそう言うと、ちょっと笑って、新しくつけられたばかりの扉から部屋に入って行った。


 愛美は玄関で靴を脱ぐと、まず自分の部屋へ入った。


 木綿地のベッドカバーがかかったベッド、新しい教科書の並べられた本立ての載った机、文庫本の並んだ本棚、クッションを投げ出してある床。

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