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STEP4 最後の女神 37

 愛美も逆境を感謝するような境地にはなれないが、自分に与えられた人生は、甘んじて享受している。


 不幸にどっぷり浸かっていては、その時の幸せに気付くことができなくなってしまう。


 今を大切にすること。

 自分の人生に起こる全てを、一つ一つ大切に受け止めること。


 そうすることに異存はない。


 ただ、リスキーゲームと称して他人の人生を弄ぶような人間の口から、そんな言葉は聞きたくなかった。


「自分にそれができるからって、人にもそれを求めると言うの? 普通の人はね、お金を稼ぐ為にあくせく働いて、働くだけ働いても老後は厳しいし、そんなつまんない人生しか与えられていないのよ。それでも必死に生きてるのに、誰かの意思でプラグを抜かれて、はいそれでおしまいなんて。あなた達のゲームで、不幸になった人達がどれだけいると思っているの。ある意味、加害者も被害者。あなた達こそが、真の加害者じゃない。見えていないだけで」


 愛美が話している間、老女はお茶を飲み、シフォンケーキをフォークで小さく切っては口に運んでいた。


 言うことだけ言ってしまうと愛美は、身につけていた細かいプリーツのピンクのスカートの裾を苛立ち込めて、いたずらに伸ばしたり引っ張ったりした。


 自分は、何をしているのだろう。


 こんな似合わない服を着て、こんな知らない部屋で、こんな知らない人と、こんなにも無駄なことばかり喋って。


 届かない声に、届かない言葉、無意味な言葉、無意味な時間。


 空しくなる。


 老女は、空になったカップをテーブルに戻すと、とり出したハンカチで口元を押さえた。


「見えていないだけで、あなたた達SGAと関わったことで、不幸になった人も沢山いるでしょうね」


 執事は優雅な手つきで、老女のカップに二杯目の紅茶を注ぐ。


 老女を睨みつけたまま、愛美は唇を噛んだ。


 この老女はきっと愛美の生い立ちなどについても、偽ガーディアンの時に細かく調べ上げたに違いない。


 殺された愛美の家族のことを、言っているのかも知れなかった。


 愛美が手を下した訳ではもちろんないが、家族の死は愛美の存在そのものが悪かったことになる。


 愛美さえいなければ、彼らは不幸な最期を迎えることはなかっただろう。


 仕方がなかったと言うには、家族三人と八人のクラスメイトの死は重すぎる。


「人は、得るのと失うのを同時にするものよ。あなたと出会った人は、ある意味幸福だとは言えるわ。普通の人生では、決して味わうことができないことを味わえたんですもの。しかし、ある意味、不幸だとも言えますわね。味わわずに済んだかも知れないのですもの」

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