表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
299/399

STEP4 最後の女神 30

 この藤堂院とうどういん文香ふみかという老女こそがクラブリスキーの首塊であると、会場で出会った時、愛美は一目で看破したようなものだ。


 いつかこの老女と対決する時が来るだろうとも思ったが、セントガーディアンの偽物の件で、その気持ちはすっかり萎えてしまった。


 リスキーのパーティー会場でかけた脅しが、愛美のできる全てだ。

 それが効かないような相手に、愛美は対抗する方法を知らない。


 それなのに綾瀬は。


 愛美の能力も、気持ちもお見通しだろうに、なぜここに寄越したのだろう。


 愛美にしかできない、愛美である必要があるのだろうか。


 別に愛美は、犯罪を起こせと言われたわけではない。あくまで、この屋敷に起こる怪事の原因を調査して欲しいと言われただけだ。


 リスキーのメンバーの犯罪の片棒を担ぐのは死んでもごめんだし、それ以外でもリスキーのメンバーに関わるのは、愛美ならごめんだった。


 それを綾瀬は、やれと言うのだ。


 綾瀬が訪ねたリスキーのメンバーは、間違いなくこの老女だろう。


 その場で、愛美なしで、何らかの密約が交わされた可能性がある。


 そして愛美は、この屋敷へと寄越された。

 藤堂院文香が、何者かも知らされないまま。


 もちろん知っていれば、ここに来た筈がない。それとも、うまく綾瀬に言いくるめられてしまっただろうか。


 あくまで、ビジネスでしかないと。


 愛美は、老女を振り返った。

「じゃ、その仕事を今日中に片付けるわ。それなら、三時のお茶も一回で済むもの」


 老女は商談成立ねといった表情で、愛美に自分の前の椅子に座るように勧める。


 愛美は、一旦決めたことは決めたことだと自分に言い聞かせて、老女に勧めに従い席に着いた。


 全面ガラス張りで、まだ弱い春の陽射しが差し込んでくるそこから見える庭の景色は、イギリスの庭園を模したような造りになっていた。


 そう高くはない潅木が茂みを作っていて、白い釣り鐘状の花が、群れ咲いていた。


 芝が敷き詰められ、潅木の向こうに白い大理石製の像の一部が見えている。

 ギリシャ神話の神か何かであろう。


 どこからどこまでモダンで、老女もこの屋敷のセットの一部のようだった。


 ここは、彼女の領域なのだ。


 愛美は我知らず雰囲気に呑まれまいと、硬い表情をする。


「それで、何かの気配がするそうですが、具体的に何か被害でもありますか?」


 このサンルームは比較的新しいものだが、あの大階段などは、どう見ても五十年やそこらで利かない古びようだ。

 外観や内装も、何度も手を入れているのだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ