STEP4 最後の女神 22
「どーも」
――Blue Jewel 涙の色と 同じこの空は
「あとの四人は、今日はどうしてるんですか?」
――Blue Jewel この惑星に 生まれた意味のように
「さあ、知らない」
この馬鹿。もうちょっと言い方というものが、あるだろう。
愛美には、マネージャーの里見が、ハラハラしている様子まで思い浮かぶほどだった。
DJは、ザキのあまりな物言いに一瞬硬直したものの、そこはプロである。
――Blue Jewel 涙の色と 同じこの空は 宝物だよ きっと
「年も近い男の子同士だけど、みんなと遊びにいったりはしないんですか?」
曲と性格と顔のギャップが、これほど激しい歌手もいないのではないか。あの性格で、この曲というのは、もう一種の詐欺である。
「しない。俺、嫌われてるから」
この憎たらしい言い方。何一つ変わっていない。
偽物のセントガーディアンの起こした事件に巻き込まれて、打ち合わせに遅れて行ったウミハルのことも、チクチクといびったに違いない。
Fフレアの人気は、ザキの人気が支えるところが大きいかも知れないが、バンド自体を支えているのは、ザキ以外の人間の偏に努力のおかげだった。
ザキの音楽を世に出す為だけに、メンバーは、この超扱い辛いザキ様を祭り上げている訳だ。
ザキから音楽をとれば、その最悪な性格しか残らない。
まあ、可愛げのないことに、音楽がなくなっても顔の良さは残る。
だがいくら顔が良くても、性格があれでは興醒め以外の何物でもないだろう。
しかしあの根性の悪さがいいのだと言う人間もいるのが、世の中の分からないところだ。
沈黙が数秒続いたところで、
「やっぱ一人だと、フォローがないからやり辛ぇ」
と、ザキが、また憎らしいことを言った。
誰の所為だ、誰のと愛美は言いたくなる。
「あとの四人は、スタジオにこもってツアーの準備中。後で俺も行くんけど」
愛美は、手元の書類をめくった。
「今、ツアーの話も出ましたが、四月の半ばからは初の全国ツアーが始まりますよね。詳しい日程はまた後ほどゆっくりとお伝えしますが、新曲は何とザキ君が作曲も手掛けているんですよね」
依頼主は、藤堂院文香というお屋敷に住む七十一才の老女。
書類はその殆どが屋敷の見取り図で占められていて、屋敷ないに何らかの気配があり、その原因を探って欲しいとだけある。
「それもあって、この曲は、責任持ってお前がプローモーションしてこいって、みんなに言われるしさ。自分達がいたら本音が出せないだろうとか言われて、それで俺一人で来たわけ」




