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STEP4 最後の女神 6

――触れれば壊れてしまう

脆くて儚いだけの その瞼をこじ開けて

瞳に映した 100万の夜


犠牲とあがないのように

ねじるように落としたしずく

織り上げていくバベルの塔


何物にも変えがたい 狂気から生まれ落ちて

積み上げていく 歪んだ螺旋構造


Lunatic

月の光に似た狂気と 輪舞ロンドを踊るように


 *


 三月が別れの季節ならば、四月は始まりと出会いの季節だ。


 巴は、この三月で小学校を卒業し、四月から公立の中学校に通うことになっている。


 卒業式の日は、真冬に戻ったかのような底冷えのする、生憎の曇り空だった。そんな締め括りで終わる六年間にも、巴は何の感慨も抱かなかった。


 型通りの式を終えて、私立中学に通う者達とのおざなりな別れがあって、巴はその六年間通い続けた小学校の校舎を後にした。


 そんな別れとも終わりともつかぬものだったので、四月からの新しい生活にも、これと言って不安も期待も巴は持っていなかった。


 ただ、淡々と準備だけは整えていた。


 今日は注文していた制服を、専門店までとりに行ってきた。


 仕上がりが遅れていたので、学校の教科書の受けとり日と重なってしまったが、母が休みをとってくれたので、車を出してもらえた。


 制服の受けとりだけなら自分一人でも出来るが、配布される教科書を持って帰るのは、一人では無理だ。


 SGAのメンバーの誰かに、手伝ってもらうことなど考えもしなかったが、紫苑か愛美当たりなら喜んで手伝ってくれただろう。


 東大寺は、バスケ部の合宿からまだ帰っていない可能性があった。それでも、たまには親子水入らずというのもいいものだ。


 母と出かけることなど滅多になかったので、久しぶりにデパートでの買い物にも付き合った。

 母親は、あれもこれもと次々と買い込んでいったが、その殆どが自分の物ではなく巴の物だった。

 

 巴は母親の買い物に辛抱強く付き合いながら、女性の買い物なんてものは、要不要と言うよりは、買うこと自体が楽しいのではないかとある意味悟ったようなものだ。


 ただ最後には、デパ地下の有名店のケーキを渡されて、制服姿を見せてあげたらどうなのと言われて、母とは別れて帰ることにした。


 母はSGAのメンバーの中でも、特に愛美を指して言ったのだろう。


 両親との話の中で、去年の夏のことは一度も触れられることはなかったが、忘れられていた訳ではないようだ。


 東大寺が記憶をいじったのかとも思っていたが、両親は両親なりに自分の記憶(現実)と折り合いを付けたのかも知れない。

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