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STEP3 Starless 89

 ちょっと格好つけ過ぎかとも思ったが、その方が見映えがするかと愛美は思い直す。

 一旦、壁の上に両足を揃えて立った。


 壁の向こうには、愛美が飛び降りるのを東大寺が腕を広げて待っている。


 安全な東大寺の腕の中に、愛美は飛び降りた。


 危なげなく愛美を東大寺は受け止めて、そっと地面に降ろしてくれる。

 東大寺だけでなく、帰った筈の長門も巴も紫苑も、全員が壁のこちらには揃っていた。


「ああ言うので良かったのですか?」

 紫苑が恥じらいを含んだ表情で、声を低めてそう言った。


 まだ、セントガーディアンの五人は、壁の向こうの同じ場所にいるだろう。


 そのうち勝手に帰っていくだろうが、壁を挟んだだけなので、それまではあまり大きな物音は立てられなかった。


 巴も長門も、それぞれ自分の偽物をおびき寄せる罠を張って、全員がこの時刻この場所に集うような仕掛けを作ったのだ。


 誰か一人でも欠ければ、舞台装置は揃わなかっただろう。

 みんな素でやっているが、全ては愛美の作った台本通りだ。


 ただ、考えなくとも長門が長い台詞を喋ったり、紫苑が啖呵を切るなんてことには無理がある。


 二人とも舌を噛むか、言う言葉を忘れてしまって、そこでストーリーは詰まってしまっただろう。


 愛美はにっこりと微笑むと、紫苑にウィンクして見せた。


「これが映画なら、全員男優女優賞総舐めよ。でも、本当の仕事はこれから」

 

 愛美は、右手の親指と人指し指で挟んだ髪の毛を、ポケットからとり出した5センチほどの長方形の封筒状のものに滑り込ませる。

 

 その髪の毛は、偽東大寺の肩に触れた時に、さりげなくとったものだ。


「劇団員ですって? 本当に演劇やってる人間なら、もっと徹底して関西弁だってマスターするんじゃないかしら。それより、私達を見た途端の動き、まるで決められたようだと思わなかった? 彼らは所詮、駒に過ぎないわ。バックに誰かいるのは間違いないわね」


 愛美はそう言いながら目を閉じて、髪の毛を入れたその祝儀袋のような小さな飾りのついた袋の上で手刀を切った。


 この祝儀袋もとい、呪具は綾瀬から渡された物であるし、この方法を教えてくれたのも綾瀬だ。

 綾瀬なしで何でもできると思うのが間違いだった。


 結局、愛美は綾瀬に依存している。


 綾瀬は、愛美の計画すらお見通しだったようだ。


 メンバーには綾瀬は通さずにやることを伝えていたが、土壇場になって愛美は、綾瀬の元に走った。

 

 愛美達の計画を、綾瀬は咎めなかった。

 ただ呪具とその使い方と、いつも通り含蓄にとんだお言葉を下されたのである。

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