STEP3 Starless 84
東大寺が、それはないやろと言うように、愛美の背中をまた突いた。
(見えていないと思って。しかも、人の頭の中を一々読んで、突っ込みを入れるな。放っとけっちゅーねん)
東大寺は、愛美の耳許で思わずといった感じで「うまい」と一声、言った。
頼むから、妙なリアクションは入れないで欲しい。
これだから、超能力者は扱いに困るのだ。
劇団セントガーディアンか。興行の一環だとでも言うのだろうか。
全く、迷惑な話だ。
「その前に、私達のことを色々と嗅ぎ回っていたでしょう。盗聴器を仕掛けるような、姑息な真似なんかして」
愛美は腕を組んだ姿勢のまま、偽巴を今度は本当に見下ろした。偽巴は、愛美よりも身長が低い。
それでも、百五十センチ以上はありそうなので、巴とは結構身長差はあった。
しかし巴は全く裏方で、普段はこんなふうに表に出ることはないので、それほどディテールにこだわる必要はなかったのかも知れない。
それでも黒縁の眼鏡と、眉の上で切り揃えられた髪型は同じだ。
しかし本物の巴と違って、思わず髪の毛を掻き上げてあげたくなるような可愛げはない。
ただ単に、愛美の捩じれた心情が、そう見せるのだろうか。
いや、やっぱり違う。この粘着質な視線は子供のものではない。
「それは結局、失敗に終わっちゃったけど、相手になりきろうと思ったら、やっぱり相手のこと色々知らないとできないでしょ。そんなの情報戦略として当然でしょ。君は僕の言うこと分かるよね」
偽巴は、やけに舌足らずな喋り方で、路地に立った巴の方に同意を求めるような聞き方をした。
愛美も目線だけ巴に向けてみたが、巴は相手の言葉を不愉快そうに無視する。
そうだ。
その小憎らしいところが巴の巴たる所以で、その小憎らしさこそ、巴の子供の部分の現れなのだ。
「何で、私の部屋と風呂場にカメラ仕掛けたの?」
聞かなければよかったと、愛美は言ってから後悔した。
「そっちの方が面白いから」
偽巴は、愛美の身体を舐めるように見る。
童顔なだけで、愛美より年上の可能性もあった。
最近の若者というのは、見た目から年齢を当てるのがとても難しい。
若い人に限ったことではないのかも知れないか。
若作りな格好をしている大人に、不相応に高価なものを身につけている子供に、衣装と中身がちぐはぐだったりするのだ。
化粧をしている女子高生でも、制服を着ていないと、どこか幼児のようだったりする。
身体だけが大人でも、頭の中身や精神は、幼児以下なのだろう。
そう言う大人子供が増えているのが、今の世の中なのだ。




