表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
244/399

STEP3 Starless 74

 東大寺は野菜にドレッシングをからめ、大きな木のサラダボウルに盛りつける。


 紫苑の指示がなくても、東大寺は紫苑の心を勝手に読んでいるのだろう。


 痒いところに手が届くと言うか、助手としての東大寺は完璧に違いない。

 しかしサラダ菜を盛りつける途中で、既に東大寺の口にいくらか入っているのもまた事実だ。


「強盗捕まえたとか、喧嘩を止めたとか、ストーカーを撃退したとか。みんなの味方ですよ、これじゃあ。仕事ならそりゃ、あの事件にも絡んでいた!じゃないけど、殺人ウィルスで、出合う揉め事揉め事片付けたぐらいのことはしますけど。やってることの根本が違うんですよね。別に、人助けの為にやってるんじゃないんだから」


 愛美は、巴が鞄からとり出した女性週刊誌の表紙の煽り文句を読むと、空しい笑いを上げた。

 そして、折ってあるページを指を挟んで開く。


「何で、頼まれもせんことわざわざすんねんって、それは俺ちゃう言うてるけど。この前なんか、セントガーディアンの人ですかって、声かけられてサインねだられたんやて。気配消してる時はともかく、長門はデカいから外見的には目立つねん。まあ、日本におらんで今は正解やわ」


 東大寺が言うと、長門の言葉も長門の台詞に聞こえない。


 巴は、トレードマークになっている愛美のポニーテールが見られないと、どうも違和感があると言うように、愛美の下ろした髪を見ている。


 東大寺も珍しく、黒の襟付きシャツを着ている。


 普段は、トレーナーかTシャツと決まっているのに、どこか東大寺ではないようだ。

 そう言う巴も黒縁の眼鏡をやめて、縁なしの眼鏡に代えていた。


「その時の長門さんの顔を、見てみたかったです。サインねだられてどうしたんですか?」


 いつも通り紫苑だけは、メンズモデルの雑誌から抜け出してきたような出立ちだ。

 紫苑の場合は、何を着ても垢抜けた感じがするだろう。


 愛美は雑誌の記事を読むのはやめずに、返事だけ返した。

「何かの間違いだろうって、まいてきたらしいですけど?」


 ポニーテールの制服姿の女子高生。

 ラフな格好をした、中肉中背の二十才前後の関西弁を喋る男。

 二十代半ば程度の長身の男。

 黒縁の似合わない眼鏡をかけた小柄な少年。

 

 それだけの類似点を上げるなら、いくらでも似た人間は探し出せるだろう。


 殊更、自分のことだと思う者もいまい。


 ただセントガーディアンと言う囲みで語られるならば、その言葉を使った者達は、あくまで愛美達を意識していることになる。


 なぜ関西弁、なぜポニーテールなのか。



 盗聴機騒ぎのあったのが、一月の初旬のこと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ