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STEP1 Frozen Flare 24

 カラオケでマイクを通した声には、どうしても馴染めない。


「さあ? 歌なんか、歌ったことはないから」

 何だか長門が困っているようなのが、おかしかった。

 いかにも怖そうで、無口なぶん以上に何を考えているのか分からない長門だが、感覚がズレているところは見ていて面白い部分もある。


 殺しが専門だと言って、笑われた理由が分からずに途惑っているところなんかもそうだ。


「本当、長門さんってよく分かんない人」

 愛美は、ようやく心から笑った。



 私は、そう広くもないスタジオに戻るなり、思わず目探していた。

 ボディガードの長門と、一体何の為に寄越されたのか分からない愛美という少女の二人は、壁際に揃って立っている。

 やはり、気配というものを感じさせない二人だ。


 カメラマンがザキにOKを出して、一応ザキ一人の撮りは終わったらしい。大体いい頃合いだろう。

 他のメンバーが時間通り到着しているか、私は確かめてきたばかりだ。


 几帳面なリーダーのシヴァは既にもう入っていて、着替えもメイクも済ましている。ウミハルとヨータも衣装だけは着替えて、廊下で喋っていた。

 学校を早退して来るライだけが、まだ到着していないが、そう遅れはしないだろう。


 遅れるなら、連絡がある筈だ。スタジオに向かっている途中だろう。


 私は、素早く長門と愛美の二人に近付いて言った。


「メンバーが来たんで、一応長門さんのことはザキのボディーガードだと説明します。ザキが嫌がっても、側についていてもらえますか? それから近藤さんは、スタイリスト見習いということで、お願いします」


 それ以外に説明のしようもない。

 実際は、スタイリスト見習いではないのだが云々を言い出すと、私にも理解の及ばない範中になってしまう。


 ザキは、暑苦しいと言わんばかりに巻いていたマフラーを剥ぎとり、コートも脱いでしまっている。

 ライトの熱量は相当なものだ。


 峰に脱いだコートを渡すと、ザキはスタジオから出て行こうとしていた。


 まあいい。まだ時間はあった。


 長門が素早く動く。

 少女は、私の言葉にはいと返事をして微笑みかけていたのだが、長門が無言のまま歩いていってしまいそうになると、慌てて男の服の袖口を掴んで引っ張って止めた。


 ザキは足を止めて、スタッフの一人に何か文句をつけている。長門も、愛美に服を引っ張られたまま足を止めた。


「長門さん。長門さん。話。話」

 振り返った長門は考えるような仕草をして「ああ」と、疑問符とも返事ともとれる言葉を返した。

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