STEP1 Frozen Flare 23
女の友情は脆く、そしてどこかドロドロしている。
(うーん、怖いね)
その点、男の子同士の関係はサバサバしていてとてもいいように思えた。
――愛してと君は言う 夏の腐った日差しも 冬の狂った風も全て
Believe forever I think so as you Believe forever
静かに、そして切々と歌い上げられた歌詞に、愛美は思わず胸がジーンとしてしまう。
ずっと信じて、ずっと……か。
これは二枚目のシングルの曲、『Believe』だろう。
「ビリーブフォーレバーか。これをアイツが書いたのよね」
信じることは難しい。それでも、信じていたいと思う。
全ては変わっていく。いつまでも、同じではいられない。信念すら、時に移ろっていく。
それでも、ずっとを願うことは悪いことだろうか。
――信じさせてくれるものに 身を委ねて壊れることも 知っているのに
結城は体育大の推薦が決まっていて、阿部は春から専門学校に通うそうだ。来年の今頃は、愛美も進学だなんだと騒いでいるのだろうか。
先のことを考えても仕方がない。
大切なのは、今、この時だ。
しかしこの大切な時を、こんな仕事に費やしていいのだろうか。
いや、これも一つの経験だ。スタイリスト見習いにしても、こんな派手な業界で働くことなど一生ないだろう。
しかも本物の芸能人が、触れられるほど近くにいるのだ。これからどんどんビッグになること間違いなしの、美少年アイドル!
顔はよくても、性格は最悪×1000!
歌で緩みかけた愛美の精神が、また昂ぶりそうになった。
いけない。いけない。短気を起こしては、見えるものも見えなくなる。
愛美は、ゆっくり深呼吸した。
「今度、長門さんもどう、カラオケ。ストレス解消にいいよ」
東大寺もしっかり楽しんだらしく、また行きたいと言っていた。
友達とツルんで馬鹿騒ぎしていると、自分も普通の男の子みたいな気になるという東大寺の言葉に、愛美も同感だ。
仕事のことで落ち込んでいたぶん、余計にそう感じたのかもしれない。
「歌を歌うことが?」
長門は驚いたように言った。
そもそも長門のような傍若無人男に、ストレスなんかあるのだろうか。それに、長門がマイクを握って歌っているところなど想像できない。
想像できないと言えば、長門の笑顔だろう。そっちの方がよっぽど見てみたい気がする。
いや、見たくないか。凄みがあって、怖いかもしれない。
「音痴なの?」
愛美もあまり人のことは言えない。
歌を歌うのは好きだが、音楽の授業で人に混じって歌うか、一人で鼻歌を歌うのがやはり一番だ。




