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STEP1 Frozen Flare 22 

 CDデッキが隅っこに置いてあり、里見がCDを入れていたところをみると、それがFrozen Flareの曲なのだろう。

 愛美はずっとイラついていたので、曲は右から左に頭の中を素通りしていたが、どこか聞き覚えのある旋律だった。


「あっ、この歌」

愛美は思わず呟く。

「知っている曲か?」

 長門の手が、再びズボンのポケットに伸びるのを愛美は見た。


 ウィスキーのボトルは、愛美のリュックの中だ。ボディガード中でも、普段は平気で酒を飲んでいるのだろうが、愛美と組む時はそれだけはやめさせたかった。

 

 いかにもアル中という感じで、外聞が悪い。ただでさえ見た目が怖いのだから、酒など喰らっていたら怖い人そのものだ。


 長門は、途中まで伸ばした手を思い出したように止めた。


――信じてと君は言う 見えるものと 見えないものの全てを

愛美は、曲に合わせて軽くハミングする。


「この前、東大寺さんとカラオケに行った時に歌ってた」


 そうか。Frozen Flareの曲だったのか。


 熱唱している東大寺を横にして、阿部が馬鹿話をしていてそちらに気をとられていたので、誰の曲か確かめることができなかったのだ。

 東大寺とその友人二人を合わせて四人で、駅前のカラオケ屋で騒いだのは、つい四、五日前のことである。

 学校帰りの東大寺に、買物の途中で出会ったのが、運の尽きとでも言おうか。


 彼の友人達の強引な誘いにより、愛美まで祝勝会に参加させられてしまったと言うのが本当のところだ。


 進路の決まったお祝いなんか関係ないと、無理やり付き合わされて東大寺も迷惑顔だったが、久しぶりにとても楽しい思いをした。

 愛美も、一度会ったことのある結城直哉と、同じくバスケ部員の阿部哲郎(てつお)の二人だ。


 二人は三年なので部活は止めていたが、留年小僧の東大寺との付き合いは、続行中のようだった。

 男の子同士仲がいいのは、見ていて羨ましい。


 女の子は、友情などと言ってもどこか嘘臭いものを拭いきれなかったりする。特に、彼氏ができると女同士の付き合いは、完璧に疎かにされてしまう。


(ええい、早苗の馬鹿たれ)である。


 ダイフ(桜台短大付属の略)の、いつもよく一緒にいる三人の友達のうちの一人に、愛美が仕事で留守の間に彼氏ができていた。

 めでたいことだが、休み時間はもちろん、授業中に回される手紙でも惚気る始末だ。


 愛美は気にしていないが、女四人、男など作らず孤高に生きようと普段は言い合っていたぶん、残りの二人は恨みを募らせているようでもあった。

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