STEP3 Starless 45
綾瀬の教育というか、上が上ならその下で働いている人間も自然、大嘘吐きになるものらしい。
まあ、いい。
仕事がないなら、家に帰って試験勉強に専念できる訳だ。
校長は、愛美の言動に何一つ疑いを抱かなかった。
すっかり合点がいったというように、晴れやかな笑みを浮かべる。
「成程。わざわざすいませんね。いやー、もうあれ以来、ぴたりと収まりましたよ。流石ですね」
もちろん、この男の前で鞄から書類をとり出して、今回の事件の概要を見直すなどということはできなかったので、愛美はうろ覚えの内容を必死に思い出そうとした。
確か、三週間近くにも渡って、幽霊らしきものが出るとか。
東大寺で解決できたとすれば、幽霊ではなかったのだろう。
しかし、綾瀬からの連絡には覚えがない。いくら忙しくても、仕事の話を聞き逃すほどではなかった。
綾瀬は愛美に無断で、別の誰かを派遣したのか。
それとも?
「そうですか。それは結構。勿論、料金の方も支払いは済んでいますね?」
愛美は、笑みを崩さなかった。
ここは、相手に不審を抱かせてはいけない。
綾瀬が、メンバーや架空名義で一体幾つ口座を持っているかは知らないが、支払いは口座への振り込みで済まされる。
一体、一件につきどれぐらいの金をとっているものだろう。
事件にもよるのだろうが、百万や二百万ではきかないのではないか。
愛美がもらう報酬としては、百万が上限になっている。
しかし報酬分の金の管理は、秘書の西川に任せているので、どれだけの金があるものか愛美にも分からなかった。
普段の生活には、生活費として月々、綾瀬から二十万をもらっているだけでなく、更に小遣いと称して五万もくれるので、金に不自由するということがない。
マンションの光熱費や水道代、教育費は綾瀬の方の懐から出ているので、食費と日用品、服や嗜好品に使うぐらいしかなかった。
少なくとも十五、六万は、愛美の自由になる。
金銭感覚がおかしくなりそうだが、殆ど貯蓄に回しているし、必要以上の贅沢はしない主義だ。
ブランド物にも興味がないので、洋服はイチキュッパやニッキュッパだし、アクセサリーも千円程度のチープな物ばかり。
綾瀬から贈られた、または仕事の必要上与えられたブランド物は、クローゼットの肥やしになっている。
校長は、あくまで朗らかに笑いながら、
「はは。借金とりでもあるのですか。口座に今朝、振り込んでおきましたよ」
と、言う。
綾瀬の話では校長は、責任問題を問われているらしく、出来るだけ早い問題解決を望んでいるとのことだった。




