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STEP3 Starless 38

「長門さんって、物に執着ないでしょ。持ち物って殆どないし、統一しているその格好だって服とか靴に愛着があるんじゃなくて、ただ単に、自分の身体の大きさに合う服を探すのが面倒なんでしょう?」


 長門は、小さい子供のように素直にコクンと頷いた。


 二十歳を過ぎていて、なりだって大きい癖に、そうしているとまるで幼い子供だ。


 何か、とても哀れな感じがする。


 長門の恋人だった女が、どんな思いで長門の時計が欲しいと言ったか、長門には分からないのだ。


 酒にだってこだわりがある訳でなく、なければないで済ませてしまう。


 全てが、本当にどうでもいいのだ。


 他人の命も、自分の命も、大切だと思うものが何一つないのだ。


 ただ、どうでもいいのなら、なぜ送りつけられた時計を長門はしようとしないのだろう。


 人にやった物だろうと他人の物だろうと、気にしなければいい。

 それとも、ただ本当に必要ではないだけだろうか。


 時計に縛り付けられるのが嫌なだけなら、つけないという理由も分かる。しかし、それだけだろうかと思ってしまうことこそ、愛美の穿ち過ぎというものだろう。


「好きな人の持ち物って 持っていたいと思うものだと思うよ。長門さんには、思い出とかも必要ないだろうけど、その人の形見ぐらい持っててあげたら。肌身離さずじゃなくても、捨てるのはよくないよ。物に罪はないし、その物を通してあなたを慈しんだ人の存在を忘れるなんて、論外なんだから」


 長門は何も言わなかったが、そんなものだろうかといった顔をしていた。


 不思議そうに長門は愛美を見ると、

「お前も、男の持ち物だとか欲しいか?」

 と、尋ねてきた。


 それは。


「本人がいればそれでいい。物なんかいらない」

 愛美は、はっきりとそう言った。


 もし恋人から高価な贈り物を贈られても、高価なプレゼントだからと喜ぶということはないだろう。

 ただ、人に物を上げようという気持ちだけをとり出して見るなら、それがどんなプレゼントであっても嬉しいものだ。


 高価な物だろうが安物だろうが、本人の気持ちが見える方が嬉しい。

 自分の為にお店を回って、選んで買ってくれたものだと思えば、それだけで有り難いと思う。


 物の価値は、値段ではない。


 高価な物で愛美の気持ちを繋ぎとめることはできないし、恋人の持ち物を身につけることで恋人との繋がりを求めたいとは思わない。


 物は物だ。


 それでも、その物でしか繋がれない人はいる。


 長門の死んだ恋人と長門を繋ぐものがその時計だけであったなら、やはりその時計は捨てるべきではないだろう。

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