STEP3 Starless 37
せめて卒業式まではと言われて、居残ることになったが、愛美にも自分の生活があった。
三月に入れば、高校の期末試験がある。
仕事の所為で、学業の方は遅れに遅れていた。
休日と家にいる時間は、友人からコピーさせてもらったノートと、教科書で自習に費やしている。
仕事の事後報告に綾瀬の元を訪れた時、愛美は一応、友人から聞き及んだ噂話を綾瀬にはしておいた。
その時、SGAの会社としての名称は〈Safe Guard Association〉の略だと聞かされた。
St Guardianという言葉は、冗談で綾瀬が使い始めたものだという。
愛美の話は、別物だろうとあっさり片付けられた。
綾瀬は、そんな噂があることは知らなかったようだ。巴にも、それとなく探りを入れさせると言っていたが。
そのご、何か分かったとは聞いていない。
聖なる守護者。
案外、愛美が知らないだけで、アニメか小説かに使われているのかもしれない。
いかにもありそうではないか。
「それどうするの?」
愛美は英単帳から顔を上げると、咎めるような声を出した。
リビングのテーブルは、試験対策のテキスト類で占領されている。
長門は、ゴミ袋にゴミ箱の中身を空けているかと思ったら、愛美が袋に入れて置いておいた時計をビデオのケースごと、ゴミ袋へと放り込もうとしたのだ。
別に、燃えないゴミと燃えるゴミを一緒にするなと、ゴミの分類に文句をつけたいのではない――それもあるが。
長門は、
「必要ないから、捨てる」
と、淡々と言った。
愛美が片付けておいたのに、ちゃんと気付いていたようだ。
しかし、もう一ケ月近く放置されていて、埃をかぶるままになっていた。
どのモデルかは知らないが、メーカーからして十万以上はする時計を、必要ないから捨てると長門は言うのだ。
愛美はソファから立ち上がると、長門にツカツカと近付いて、ケースの入った袋をとり上げた。
「捨てたら駄目よ。時計をあげた人って、それ、恋人でしょう?」
愛美はそう言いながら袋からケースを出し、蓋を開けて時計をとり出すと、ケースの方は長門の持っていたゴミ袋へと放り込んだ。
清々して、晴れ晴れとした顔をしながら、愛美は長門に時計を突きつける。
「ずっとつけてたやつ、欲しいと言われたから。大体一緒にいたから、自分が時計をつけていなくても不便じゃないと思って。ずっとつけなくなると、別に時計がなくても困ることはないしな」
愛美が更に押しつけるので、長門は仕方なさそうに腕時計を受けとる。それでも、腕に巻くことはしなかった。




