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STEP1 Frozen Flare 2

――追っているのか 追われているのか それすらも……


 やる気も何も、あったものではない。

 これがリハーサルなら、本番はどうなるものか想像もつかないが、本人達はその気になりさえすれば幾らでもいい演奏を、パフォーマンスを見せてくれる。


 ザキはいつになくノらないらしく、女の子よりも可愛らしい顔を不機嫌そのものに歪めていた。


 それが分かるからか、他のメンバーも誰も滞りなく今日中にリハーサルが済むとは考えていないらしい。


 今日は駄目だろう。私も、そう思った時だ。


 ザキが、二メートル近くある舞台から転落した。

 足を踏み外したにしては、動きが不自然だ。まるで、誰かに突き飛ばされでもしたかのような。


 まさか。


 私は、その考えを振り払う。


 舞台の下に座り込んでいるザキの元へ、スタッフやメンバー達がバラバラと集まってくる。


マネージャーである私が、いの一番に声を掛けた。

「大丈夫か?」


 私はしゃがみこんで、ザキの華奢に見える肩に手を掛けた。

 ザキは怪我などはないようで、私の手をうるさそうに振り払う。


 ライは何も言わなかったものの、彼らしい気遣いを見せて、舞台に尻をつけ滑るように段の下へと降りるとザキの傍らに立った。


 ライがやったように、気を付けていさえすれば、降りられない高さではない。

 ただ、足首でも捻られては困るので、段から飛び降りないようにと注意はしていた。


 ザキは暫く不貞腐れた顔で座り込んでいたが、デニムの尻を払いながら立ち上がる。


 どこもなんともないようだ。


 しかし、下手をすれば首の骨を折っていたかも知れない。


 舞台上から覗き込むようにしているリーダーのシヴァが、年長者らしい落ち着きで言った。


「大事な身体なんだから気を付けてくれよ」


 大丈夫そうだと分かって、スタッフ達にも安堵の表情が浮かんだ。

 ザキの機嫌を、とらねばならないことを知っているライブハウスの関係者が、わざと陽気な口調で言う。


「結構ドジなんだね。ザキ君」


 ザキの反応に合わせようと、スタッフ達はいつでも笑顔になれるような表情で、身構える。


 普段のザキなら照れ臭さを紛らわせる為に、わざと乱暴な態度で、悪かったなとでも言って、それで終わりになる筈だった。


 ザキはやっぱりぶっきらぼうに、

「落ちたんじゃねーよ。落とされたんだよ」

 と言って冷めた目で、舞台の上を見る。


 冗談で言っているのではなかった。


 言葉にこもる憎しみを感じ、その場の雰囲気が一瞬にして凍りつく。



 舞台の上にいたのは、メンバーである四人の仲間だけだった。

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