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STEP3 Starless 12

 長門は普段から無口な為、一言しか口を聞かなかったが。


 そのBJのメンバーは挨拶代わりに、長門の車にも小型の爆弾を仕掛けていった。


 長門が気付かなければ、愛美は爆発に巻き込まれて死んでいただろう。


 何度も命を助けられている命の恩人を嫌うのも失礼なことかも知れないが、それはそれだ。


「それを、送ってきた訳?」


 愛美の口調はやけに突っ慳貪だったが、長門は言葉の調子にまで気が回らないようだった。


 長門は時計を弄びながら遠い目をして、

「こんな物が、まだあったらしい」と、呟いた。


 感慨を抱いているようにも、見えないことはなかった。


 長門はようやく愛美が、自分を白い目で見ていることに気が付いたらしい。

 ちょっと首を捻って考えていたが、ハッとビデオのケースに目を走らせると、慌てたようだ。


「これは、違うぞ。アイツの趣味だろう。俺は、もっと、こう」


 ビデオは長門の物じゃないと分かっても、愛美はまだ不機嫌さを隠さなかった。


「もっと、こう、何よ?」


 流石に長門も、まずい話題だと気が付いたらしい。


 長門は、曖昧に口を濁して黙ってしまった。


 何か分からないが、愛美は腹が立つ。



 愛美は腕を組んだまま暫く長門を見下ろしていたが、諦めて、手提げを探ってアルバムを引っ張り出した。


「これね、ZAKIが長門さんにって、今度出るアルバムだって。里見さんが綾瀬さんのところに送って寄越したらしいわよ」


 愛美が差し出すアルバムを、長門は受けとろうともせずに、不思議そうに顔をひねるばかりだった。


「サトミ? そんな女に知り合いがいたか。ザキって何だ?」


 初めは、惚けているのかと思う。


 空惚けるのは綾瀬の専売特許だということを、愛美は忘れていた。


 愛美は両腕を腰に当てて、出来の悪い子供でも叱るように、長門に偉そうな口を聞く。


「エフフレア、Frozen Flareのボーカルの、根性悪い奴のボディガードをしたでしょ」

 

 長門は、惚けているのではない。愛美の言葉に、何の反応も示さなかった。


「フローズンフレア?」


 愛美は、あまりの無反応に急に怖くなった。

 ボディガードをした相手も、殺した人間のことも覚えていないと、長門は言っていなかったか。


 ザキのボディガードをしたのは、まだ二ケ月前のことだ。


 十年とか、何年も前のことではない。


 いや、それどころか長門は、数日前に受けた仕事の内容すら覚えていないのではないか。


 愛美は、言いようのない不安に駆られて、泣き出しそうな声を出す。


「忘れたの。私と一緒にパートナー組んだじゃない」

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