STEP1 Frozen Flare 18
スタイリスト見習いを名乗るからには、少しは役に立ちたいという気持ちがあるのだろうか。
「どんどんCD買って、売り上げに貢献しろってな」」
ザキは唇の端を歪めて吐き出すと、紙をクシャクシャと丸めて、私の足元に投げて寄越した。
ファンのみんなへの一言という訳……か。
俺らのCDを買って、どんどん聞いて欲しい。BY ZAKI
思わず、私は心の中で溜め息を吐く。
側で自分を見ている愛美に、ザキは気付いたらしい。
ザキは、
「見てるだけで金もらうなんて、都合よすぎんだよ」
と、叩きつけるように言った。
やつ当りか、うさ晴らしか。
ザキのイライラの鉾先は、愛美に向けられた。
立場の弱い人間を見抜くザキの目は、相当のものだ。
一旦目をつけられたが最後、とことんいじめ抜かれると思ってもらっていい。
それを覚悟してもらわねば、この仕事は務まらなかった。
私達はそれこそザキの機嫌をとるのが仕事だから構わないし、もう諦めてもいるが、関係ない人間にとってはいい迷惑に違いない。
無料でいいと言われたが、幾らかの金は経費として落としても、別に構わないだろう。
私はこれから先のことを考えて、彼女に少しばかり同情していたようだ。
ザキは、いかにも横柄に顎で彼女を使った。
「喉渇いた。なんか飲み物」
私が、口を挟む暇はなかった。
愛美は、はいと返事をすると、もう駆け出して行く。
私は困ったものだと思いながら、ザキをチラリと見た。
ザキは、不機嫌そうに私を見返す。私は慌てて気のないふりで、しゃがんで紙を拾い上げた。
「ザキ君って、クールで大人なのね。なんて、都合のいい解釈をしてくれる。ファンってのはいいものだよ」
馬鹿なだけじゃんと、私の言葉にザキは返す。
いつもなら当てこすって、もっとファンを大事にしろって言いたいんだろうとか絡んでくるのだが、今回ばかりは何も言わなかった。
ターゲットは、愛美一人に絞るつもりらしい。年も若く、しかも見習いと言う触れ込みだ。ザキが、黙っている筈がない。
ザキは、飲み物の好みもうるさかった。
炭酸は駄目で、果汁飲料も嫌い、普段好んで飲んでいるのは紅茶、特定のブランドのミルクティーか砂糖抜きのミルクティーだった。
外の廊下に設置してある自動販売機は、紙コップと缶の両方があったが、缶はザキの好きなメーカーの物は入っていなかった。
紙コップの方ならば、ザキは真冬でも氷を入れた冷たい飲み物を飲みたがる。
無難な紅茶かコーヒーを選ぶにしても、ザキの好みを知らなければ、ホットドリンクを買うに違いない。




