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STEP3 Starless 9

 綾瀬は、悪い人間ではないだろうが、意地の悪い人間ではあった。

 愛美が他人の言葉に影響を受けやすいことを知っていて、わざと水を向けるようなことを言う。


 どうして、嫌いなのか? 人を、物のように平気で殺すから?


 愛美だって人を殺す。


 平気で殺す訳ではないが、やっていることは同じだ。長門を責めることはできない。


 一度ならずも二度までも、恥ずかしい格好を見られただけでなく、二度目などは抱き締められたから?


 抱きつかれたぐらいで嫌いだと言うのなら、東大寺はどうなるのだろう。東大寺にハグされた回数は、十や二十では利くまい。一々、覚えてもいないが。



「どうしてって、とにかく嫌いなの」


 愛美が自分自身で動揺するのは、気持ちに変化があったからに他ならない。


 長門は、出会った当初の嫌な奴から、変な奴、何を考えているのかいまいち分かんない奴へと変わっていた。


 なぜか憎めないが、こうして口にしてしまうと依怙地になってしまう。


「あんな変態大馬鹿野郎、人のこと子供だって馬鹿にして、私はどうせ子供だし」


 まるで、拗ねているみたいだ。


 これでは長門のことが好きで、自分を認めてもらえないから、拗ねているのと変わらなかった。


 愛美は墓穴を掘っていることに気付いて、ムッとして口を閉ざす。


 危うく綾瀬に乗せられるところだった。

 そうはいくもんか。


「綾瀬さん、私に何を言わせたいんですか?」


 愛美は、綾瀬をジトーッと恨みがましく睨みつける。


「別に何も。前に言っただろうが、お前を傷付けたくないと」

 綾瀬は全くの無表情で、声だけやけに造ったような優しさを滲ませて、こう言った。


「長門は、普通の人間とは感覚が違うんだ。ここに来るまで奴はずっとBJにいた。物心ついて以来、ずっと殺し屋として生きてきたんだ。あいつを普通の人間として考えるのはやめろ。普通の人間だと思うから、嫌いだなんて言葉も出てくるんだ。あいつには、人の心はないんだ。殺人ロボット相手に、お前に何ができる? お前が傷付くだけだ。私は、それが言いたかったんだ」


 押されると押し返す、引かれると引き戻そうとする。

 否定されると肯定したくなる愛美の性質を、綾瀬はよく理解していた。


「でも、あの人だって好きでBJに入った訳じゃないでしょう」


 嫌いだと言いつつ、長門を庇うような発言が出るのも、やはり心底嫌っている訳ではないからだろう。


 きっとまたしても、会話の流れは綾瀬の思い通りに運んでしまったのだと思う。


 会話の流れだけじゃない。

 愛美の感情も、綾瀬の思うように動かされた感じがした。

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