STEP3 Starless 6
尾行などもないようだが、愛美はそのへんは長門のようなプロではないので、気が付いていないだけかも知れなかった。
紫苑のところには、リビングに盗聴器が仕掛けられていたらしい。
多分、盗聴器だった筈だ。
紫苑も、現物は見ていないらしい。
と言うのも、掃除も兼ねてあちらこちらと探し回っていると、神父から意外な言葉を聞かされたからだ。
曰く。探しているのは、何かよく分からない小さな機械のようなものかと。
盗聴器は神父によって発見され、ガラクタだと思って捨てられてしまったようだ。燃えないゴミとして、回収されたあとの為、確認のしようがない。
それで、誰かの目論見があったとすれば、全て断たれたことになる。
三学期も始まり、平凡な日常が続いた。
話を綾瀬に持ち出された時からこちら、それきり愛美は忘れていたと言っていい。
綾瀬から仕事の連絡がきたのは、それから十日ほどした頃だ。
巴が作成した資料の見出しを読むなり、愛美は素頓狂な声を出した。
「東和学園中等部って、今度は中学生ですか? 私、大人っぽいって言われるから、無理あるかも」
愛美は、西川の出してくれた苺のモンブランに手を付けずに、資料のページをパラパラとめくって、文字を拾い読みをする。
綾瀬は、中学生に混じってても誰も十七だとは思わないだろうと憎まれ口を叩く。
そのあとで、急にビジネスライクな調子になって、
「臨教として行け」と、言った。
「!?」
「養護教諭としてな。カウンセラーの役割もしてもらうことになる。まあ、仕事とは関係ないが、カウンセリングがメインになるだろう。依頼主が理事長だから、教員免許を持っていなくても構わないことになっている。だが、年は誤魔化せよ」
十四年前に行方不明になった理事長の孫の白骨死体が、学園内の池から発見されたあとから、校内で変事が相次いでいると言う。
その頃は理事長は、理事の一人に名を連ねていた。
その、現理事長の五つになる孫が、学園内で行方不明になったと言う。
誘拐か、それとも事故かと当時騒がれたようだが、結局何も分からないまま現在まできていたらしい。
池の埋め立ての際に白骨死体が見つかり、そこでようやく孫はずっと昔に死んでいたことが分かったようだ。
死体の発見と、変事の関連を調査せよとあった。
綾瀬は、愛美が聞いていても聞いていなくても構わないと言った調子で話を続ける。
「受験前で、養護教諭の方が、ノイローゼになったそうだ」
有名高校、有名大学進学率の高い中学、高校として東和学園は有名だ。
私学なので金を積めば入れるが、受験に関してはとてもシビアだと聞いている。




