STEP1 Frozen Flare 17
内部の人間から見れば彼らは、積み上げ損ねて、今にも倒れそうな積木の城でしかなかった。
雑誌の表紙だけは、メンバー全員で撮ることに決まっている。
他のメンバーは時間をズラしてあり、もう少し後で来る手筈になっていた。
ザキの遅れを、初めから考慮して仕事を組んでいるので、さほど仕事には支障は出ない。
撮影後、スタジオでのライブのリハーサルが予定されていた。
まだ本番で歌う歌が決まっていないので、打ち合わせも必要だ。
私は、私服から衣装に着替え終わったザキに、目を通しておくようにとインタビュー用の質問事項を書いた紙を手渡した。
ザキは面倒臭がって、勝手に書いておいてくれと言ったが、そうもいかない。
しかし、ザキの答えをそのまま掲載させる訳にもいかないのも事実だ。
質問:歌詞を作るうえで気を付けていることは?
ZAKI:ない。適当。
質問:これからのF・Flareとしての活動の展望は?
ZAKI:一年も経たないうちに解散してるんじゃねぇ。
これでは、お話にならない。
私が話を膨らませ、または言葉を変えてそれらしい形にしなければ、あまりにも刺激的すぎるだろう。
世間に、ザキが過激な性格だという印象を与えるのは構わないが、程度の問題がある。
一歩間違えれば、それこそ最低な奴として誰にも顧みられなくなってしまう。
微妙な線で、その曲がった性格が彼の可愛らしい顔と相まって、女心を擽ることになるのだ。
私がチラリと見た時、愛美は峰を捕まえて何か言っているところだった。
愛美は真剣な表情をしていたが、それを聞く峰は微笑んでいる。
すぐに愛美は、忙しくしている峰を解放した。
一体、何を話していたのだろうか。
峰が選んだ衣装は、いつもながらシンプルでいて、ザキの魅力を損なうことなく余すことなく伝えるものであった。
紫のハイネックの五分袖セーターに、手編み風のザックリした白のマフラーを首にグルグルと巻き付けている。
下は黒の革パンツ、靴はブーツだ。
その上から足首まである黒のロングコートを羽織ることを考えると、暖房が利いた部屋では、見ているだけでも暑苦しかった。
峰はセットしたザキの髪の毛を、流すようにして微妙なニュアンスをつけている。
メイクは、前髪が長く半分隠れている目元を強調するものだ。
長い睫と瞼を紫に染め、口紅はベージュとあっさりしている。
ザキは、簡易椅子に座った格好で、全ては峰に任せて手元の紙に目を落としていた。
愛美は、側に立って真剣に峰の手元を見つめている。