STEP2 皆殺しのJungle 61
新しく混ざった人間と、既にいた人間達の間に、ひとしきり社交辞令が飛び交う。
「何人か、新参者がいるようですな?」
最初にそう言ったのは、今しがた輪の中に入ってきた初老のスーツ姿の男だ。
同じ年頃に見える茶色のスーツ姿の男が、それを受けて言う。
「みんな隅っこで、壁を飾っているつもりでしょうかな」
素晴らしい冗談のように、その場にいた皆が声を上げて笑った。
人を見下したような不快な笑いだ。
最初の人物が、
「おや。ご老体は、見あたりませんな」
と、会場内を目探しするような素振りを見せる。
「あの人は、引退するそうですわよ。今回はなかなか頑張っていたから、少しは見直してあげようと思っていましたのに。代わりに娘か孫かがくると」
やはり初老の、美しく着飾った女がそう言って、その場にいた者達に注意を促した。
黒のロングドレスが、身体の一部のように似合っている。まるでモデルのような容貌は、衰えることを知らないかのようだ。
「あれですわ」
女の視線の先には、二十代半ばほどに見える若い女がいた。
若くても三十代以上の客達の中では、ひどく目立っている。
年若いだけでなく、美しさからもその女は人目を引いた。
大胆なスリップドレスで、惜しげもなく脚線美を披露している。
「三十になると聞いていましたが、どうしてどうして二十五、六にしか見えませんよ」
ゴルフかクルージング焼けか、そのどちらかに見える肩幅のある壮年の男が、好色そうに瞳を光らせている。
既に目をつけていたに違いない。
先ほど面白くもない冗談を言った男が、
「あの爺さんの孫にしては、なかなか堂々としていますな。ふむ。爺さんとは違って、これはまあまあ楽しませてくれるようになるかも知れませんぞ」
と言って、顎を撫でた。
そして、少し気にするような素振りで、
「隣の男は?」と、聞く。
若い女は、慣れた手つきで隣にいる背の高い男に、自分が飲んでいた飲み物のグラスを押しつけている。
ボディガードに対する応対とは明らかに違うが、連れの男に対する態度でもない。
あまりにも無造作で、そして物馴れていた。
「渡英中に見つけた犬だとか」
今までずっと黙っていた小柄な着物姿の女が、物腰に似合わぬ強い口調で言う。
「ほう、犬とな。記憶がないとかで身許も分からないのを、よくも側におけるものだ。女はこれだから」
羽織袴の男が、頑固な年寄りといった口振りで、嘲るように言う。
ロングドレスの女が。
「あら、肝が据わっているのでしょう」




