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STEP2 皆殺しのJungle 45

 愛美は、てっきり駅に向かっているものと思っていた。

 しかし、駅は後回しだった。


 途中で長門はまた車を乗り捨てて、工具を持って行ってしまう。


 またしても愛美は、置いていかれた。


 愛美にできること。できること。

 ただ待っているだけなら、愛美でなくともできる。


 東大寺だったら、紫苑だったら……。他の人間がどうかは、分からない。


 愛美なら何ができる?


 無線では、神田駅周辺だけでなく、沿線沿いに人海戦術を繰り広げている様子が窺い知れたが、やはり何一つ見つかっていないようだ。


 多分長門には、中央線に仕掛けられた爆弾を後回しにしても平気だと考えるだけの理由があるのだろう。今度は、さっきよりも早く戻ってきた。


 神田駅の周囲には、流石に警官の姿が多かった。


 まだ七時三十分にはなっていない。

 八時まであと三十分。


 二時間以上かけて、何十人もの人間が探してなお見つからないのだ。


 爆弾など、本当は仕掛けられていないのではないか。


 愛美はその思いを口にする代わりに、長門にこう聞いた。


「見つけられるの?」

 長門は淡々と、しかしどこかに自負を滲ませながら、

「当てはある。連中のやり方は、俺のやり方だ」

 と、言った。


 愛美の膝から工具入れをとり上げた長門の視線が、窓の外へと流れる。

 長門の車目がけて近付いてくるのは、先ほど見たあの刑事らしかった。


 先に来ていたのだ。


 長門は、やはり愛美を置いて一人で行ってしまった。


 愛美は他にすることもないので、長門の少ない言葉の中から、長門の生きてきた過去について思いを馳せていた。


 連中のやり方は、俺のやり方だ。二年ほど前までそこで飼われていた。殺し屋の組織だ。ずっとアメリカにいた。拷問をする時は、言葉でもっと苛めと言われたが、お喋りは苦手だ。仲間じゃない。仲間なんかいない。



 車の時計は、八時十分前にまでなっている。

 長門はまだ戻ってこない。


 警察の無線のやりとりも、芳しいものはない。


 

 大丈夫。長門ならできる。


 別に、元仲間と一対一で決着をつけるという訳ではない。


 爆弾の処理だ。長門ができると言ったら、心配はない。



 愛美は、暗い窓の外を眺めて溜め息を吐いた。

 窓に凭れて、愛美は目を閉じる。


 昼間いろいろあったので、疲れていたのだろう。

 愛美は、ちょっとうとうとしてしまったようだ。


 ドンという空気を震わせるような振動音に、愛美は飛び起きた。

 時計を見ると、八時ちょうどだ。


 愛美は、扉を開けて道路に降りた。


 空が赤くなっている。


 車を運転していた人達も、車を停めて窓を下ろして、愛美と同じ方向を見ていた。駅の方だ。

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