STEP1 Frozen Flare 14
髪の毛は、今回のCDのイメージに合わせて、赤とオレンジにカラーリングされていた。
本人としては、男っぽさをアピールしているつもりだろうが、ザキがやると女の子がわざと突っ張って男の格好をしているようにしか見えない。
十七才の成長期真っ只中だが、伸び盛りには遠かった。
まだ身長は、165センチに届かない。それは建前上のことで、事実は160ちょいというところだった。
愛美という少女と、あまり変わらないぐらいだ。
ザキは、立ったままの私達三人にツカツカと歩み寄るなり、昂然と顔を上げて見せる。
私は175はあるが、ザキを前にすると自然に背を丸めて、身長差をあまり目立たなくさせるような習性が身についていた。
その時も私は、思わずへりくだった姿勢をとっていたが、ザキの目は私などに向いていなかった。
ボディガードだと言う男は、長門だと名乗った以外口を開いていない。
身長は190センチはあるだろうが、服の上から見る限りは、華奢にさえ見える体型をしている。
私の知るボディガードと言えば、肩幅もあり胸筋も盛り上がっていて、いかにも黒のスーツがはちきれそうな男達ばかりだ。
それに比べると、長門はボディガードには見えなかった。
「あんたか? 俺のボディーガードって。ガタイはいいけど、見かけ倒れってことはないよな」
ザキは、不機嫌そのものの顔で、もったいぶった言い方で男に絡んでいく。
そう言いながら、ザキは男の胸を乱暴に押した。しかし、長門の身体はビクリともしなかった。
鼻筋の通った整った面構えは、流石にやくざのような凄みがある。
対峙すると思わず逃げ出したくなるほどだが、この長門も、愛美と同じようになぜか印象は薄かった。
男が、無口な所為もあるかも知れない。
長門は黒の革パンツに、白い長袖シャツを無造作に着ているだけだ。年は、二五、六といったところか。
ザキはちょっと鼻白んだようだが、相変わらずふてぶてしい顔を崩さず、
「剣道とか柔道とかの有段者な訳?」
精一杯の虚勢を張って言った。
長門は、抑揚のない声で、一言。
「いや。専門は殺しだ」
控え室には、峰や私以外にも数人のスタッフが詰めていた。
ザキが現れてからは、皆、こちらの一挙手一投足を見守っていたものだから、男の言葉に一瞬誰もが凍りつく。
妙な間があり、それから一気に笑いが弾けた。
かくいう私も、マジじゃないよなとか思いながら、同じように笑っていた。
長門は表情一つ変えずに、笑っているザキを含めた人間達を見ている。途惑っているようにも、見えないことはなかった。