表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
134/399

STEP2 皆殺しのJungle 35

「殺せ」


 呻くように老人はそう言い、長門は、

「もちろん殺す」

 と言って、老人が口を閉じる前に、再び腕を噛ませた。


 長門は、腕を押し上げて老人に真っ直顔を上げさせる。


 ナイフを握った長門の手はまず右に、そして左に動かされる。一方は地面に転がり、もう一方は着衣に引っ掛かっていた。


 老人は耐えるように、きつく腕を噛み締めている。


 ピラピラした奇妙なそのフォルムのものは、老人の頭についている時は、耳だったものだ。

 耳を削ぎ落とされて老人は、やはり声も出せず動くこともできずに、身体を震わせていた。


 愛美の足も、ガクガクと震え始める。


「質問は同じだ」

 長門はそう言って、男の口が動くようにしてやる。


 いつも通り長門は無表情で、声にも抑揚がない。いかにも、当たり前のことをやっている感じだ。


「化け物め」

 長門は再び、刃物を振るった。


 今度は口を押さえていなかったが、それは悲鳴にもならなかった。


 老人の、左手頚から先が落ちた。

 楕円の切口から血が吹き出すのを、長門は再び尻ポケットから出した巻いた針金で、倒れた老人の肘から上の部分にきつく巻き付けた。


 吹き出す血の量が、滲む程度になる。


 長門は、誰に聞かす訳でもないような調子で、三十分だと呟いた。


 老人の命のつ時間を表していることは、言われなくとも分かる。


 愛美は、もう立っていられなかった。押さえた口元から洩れる息は、老人のものと同じぐらい早い。


「答えは?」


(怖い。もう嫌だ)


 長門が全く知らない人間に見えてくる。

 いや、そうじゃない。長門のことなど、初めから何も知らないのだ。


 彼は、殺し屋なのだ――プロの。


「知らん」

 老人は苦しげに、やっとそれだけ言った。


 長門は落ち着いた足どりで、老人の前へ回り込んだ。


 次は何をするつもりだろう。


「次は右手。本当は、手の前には性器を切る。俺一人なら構わないが、女の前だから省いた。その次は、腹を切って内臓を少しずつ切りとっていく。気絶はさせない」


 愛美は恐怖で足が竦んで動けなかった。


 長門の背中。こんなにも近くにあるのに掴むことができない。


 老人が上ずった声で、獣めと呟いた。


 根の生えたように動かない足を無理に引きずって、愛美は半ば長門の背にしがみつくようにする。


「もういい。もうそんなことしなくていい」


 愛美は長門の腰に腕を回して、離すものかと力を入れた。


「もう少しで吐く。お前の手を汚すまでもない」

 長門は愛美の肩に手を置いて、言い聞かせるような調子で言った。


 愛美は、駄々っ子のように首を振って、嫌々をする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ