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STEP1 Frozen Flare 13

 スタイリストの峰陶子は何も聞かずに、よろしくねと微笑んだだけだった。

 この業界、そうでなければ渡っていけない。


 コネや偉いさんの思惑やら、表が派手な分だけ裏にはどす黒いものが溜ってくる。

 業界馴れしていれば、物事にはあまり嘴を突っ込んでは得策ではないと、自ずと分かってくるものだった。


 どこにどんな繋がりがあるか、分かったものではないのだ。自分の首を絞めたくなければ、文字通り長いものには巻かれなければならない。


 峰は、私よりも幾つか年下なだけだが、仕事熱心でなかなかの腕を持った女性だ。

 愛美も、彼女となら問題を起こさずに済むだろう。


 スタッフの中にも、色々な手合いがいる。

 アーティストの威光を傘に着る奴、いっぱしの仕事ができるつもりになっている奴、妙にアーティストに媚る奴。

 

 それでも心の中では、所詮アイドルなんて旬のものだと見下しているような、そんな輩は大勢いる。


 マネージャーの私だって、似たようなものだろう。

 顔を売りにして売れるのは一時期だけのことだと、冷めた目で見ている部分はあった。

 何と言っても、次から次へと新しいアイドルは生まれてくる。移り気な若者は、すぐに他のものに興味が移ってしまう。


 そして今のままでは、 Frozen Flareも、シャボン玉のように弾けて消えるだけのアイドルとして終わるだろう。


 だが私は、彼らを高く買っている。なぜなら彼らの才能は、紛うことない本物だからだ。



 私が時計に目を走らせた時、ようやく控え室の扉を押し開けて、問題の本人が入ってきた。

 約束の時間が過ぎているのも、いつものことだ。


 寝坊をした訳でも用意に手間どった訳でもないことは、私がよく知っている。まるで、それが自分のポリシーだとでも言うように、ザキは時間に遅れてやってくる。


 ボディガードの件は、勿論本人に通してあった。その話をした時、ザキが目を輝かせて聞いていたことを思い起こすと、私はいらぬ心配でぐったりとなってしまうのだった。



 ザキと言うのは、勿論芸名だ。メンバー全員、本名は伏せられている。

 ザキは、中学時分につけられたあだ名だそうだ。本名は 曽根崎一也と言う。


 

 ザキは部屋に入ってくるなり、見知らぬ二人の人間を睨みつけた。


 少年の今日の出立ちも、十分に自分の容姿を意識したものだった。

 穴の開いたビンテージデニムに、ブランド物のハイカットのスニーカーは私物だ。上に羽織っている、ファーのついた黒革のジャンパーは、衣装を買いとったものだった。

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