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STEP2 皆殺しのJungle 19

 試験の結果は思っていた通り、可もなく不可もなくといったところだ。

 問題の生物は自信があったにも関わらず、見事に玉と散る。


 しかも、七十九点。


 ボーターラインは、八十点だ。


 その一点、たった一点の為に泣きを見るとは、テストを返す時に教師に言われたおめでとうの言葉以上に、愛美はやるせないものを感じた。


 一円を笑う者は一円に泣く。


 補習を受けてもらうと最初にはなっていたが、流石に赤点をとった訳ではないので、補習対象とは認められなかった、

 もちろん、それで終わった訳ではない。それなら今苦労している筈がないのだ。


 バカセンこと千田は、二学期に習った教科書を、レポート五枚以上にまとめて冬休みが始まる前に提出しろと言った。


 二四日まで、あと何日だと思っているのだろう。

 四日だ、四日。


 もちろんレポートだけやるなら、終業式を待つばかりの学生にとっては、難しいことではないだろう。


 だが愛美は、学生と仕事と家事の三つを維持しなければいけないのだ。

 三十過ぎて親に面倒見てもらっている千田(未婚)と、今の愛美のどちらが忙しいかは、比べるまでもない。


 扉を開け閉めする音に、おやと、愛美は顔を上げた。

 長門が、出かけたかしたのだろう。


 紫苑が、来る筈はない。

 吸血事件を解決したと思えば、今度はクリスマスの準備だとか。


 最後にあった時、紫苑は教会の催しであるクリスマス礼拝の支度にかかると言っていた。

 少し前まで入院していたと言うのに、神父はいつもの年にも増して、素晴らしい礼拝を執り行おうと張り切っているそうだ。


 愛美も暇ならば、手伝いにいってもいいのだが、そんな余裕は到底なさそうだった。


 長門が出かけたのかと思ったら、そうではなかった。


 ダイニングの扉を開けて顔を出したのは、巴だ。

 灰色のオーバーにマフラーの下は、制服だった。

 もちろん、ランドセルを背負っている。


 顔を見せるなり巴は、手袋を外すのももどかしげに、鞄の中から茶封筒をとりだして、テーブルに載せた。


「資料です。遅くなって済みません。本来の情報サポートだけなら楽なのに、社長は僕にまで仕事を回すんだから、やっていられませんよ」

 そう言うとようやく巴は、防寒着を脱ぎにかかった。


 ちょうど飲み物でもと思っていたところだったので、紅茶にしようと言って、愛美は席を立つ。

「その内みんな、ボイコットしだすんじゃないかしら」


 キッチンには何種類かの紅茶の葉とともに、ティーサーバーなどがあったが、愛美は無精して安物のティーバッグを使っていた。

 美味しい紅茶を入れるのは、紫苑の専売特許だ。

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