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STEP1 Frozen Flare 11

 長門のように図太い奴には、それこそ打ってつけだろう。

 他人のことで振り回されることもない。どこまでも我が道を行くだけだ。


 愛美に、お鉢が回ってくることは綾瀬の言う通りあり得ないので、のほほんと構えていられるのだった。


「どこまでが本当で、どこからが嘘なのか。メディアなんて、その全てが虚構に等しいわ」

 愛美は、珍しく自分が会話の主導権を握っていることに、気を良くしていた。


 綾瀬が、喉の奥だけで笑う。

「虚構と言う名の、一つの現実だろう」

 突き放されたような言い方に、愛美は冷水を浴びせられたような気分になった。


 リアルをつきつけられたようだ。


 愛美は、チラリと綾瀬を見た。表情の窺えないサングラスと、ポーカーフェイス。


 深く息を吸い込むと、気分を変えるように愛美は大きく息を吐いた。


 そしてガラリと口調を変えて、

「あの子は可愛かったとかって、後でスカウトされちゃったらどうしよう」

 と女の子ぶって言ってみたまでは、よかった。


 綾瀬は、一瞬の間も置かずに一言。

「それはないな」

 思わず愛美はムッとし、そして気が付いた。


 おじさんには無理じゃないかなどと言った愛美に対しての、さっきの復讐だろうか。


 綾瀬は再び、ポケットから煙草のケースをとり出すと、口に銜えながら器用に言う。

「それどころじゃないだろう。一番の有望株に何かあったらと、ヒヤヒヤしているんだから」


 それもそうだ。

 だからこそサトミさんとやらは、こんな会社で本当に大丈夫なんだろうかと、玄関口でウロウロしていに違いない。


 どうせ二度と会うこともない人間だ。

 掻いた恥は、綾瀬に押しつけておけばいい。


 そもそも秘書でもないのに、客がきたからコーヒーを出せなどと命令する綾瀬が悪い。



「よし、長門と組め」

 突然綾瀬にそう言われても、愛美には何を言われたのか分からなかった。


 綾瀬は、もう決めたんだという意思表示をはっきりと表している。

 愛美が何を言っても、とりつく島はない感じだ。

 

 綾瀬の言葉を、愛美はゆっくりと反芻した。長門と組む?


 Frozen Flare、アーティスト、ボディ……。


「ボディーガードでしょ。何で私が? 出る幕ないわよ」

 愛美は一歩、綾瀬に詰め寄ったが、綾瀬に胸の前に人差指をつきつけられて、渋々踏み留まった。


「今度仕事を回した時に、腑抜けになっていたら困るからな。だが、長門の足だけは引っ張るなよ」


 言うことはそれだけかと言いたい。


 この男に文句を言っても仕方がなかった。何を考えているのか分からないが、ここは大人しく従った方がいいだろう。

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