表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/399

STEP2 皆殺しのJungle 4

 所詮生物と侮って、誰も真面目に勉強していないいい証拠だ。その中で、八十点以上とれというのは、ひどい話だろう。


 毎回のテストで七十点代をキープしている愛美だが、七十から八十の壁は越えるに越えられないものがある。


 ああ、話が思いきり脱線してしまった。テストのことはもういいのだ。


 一日目にあった生物は、八十点を越えている自信がある。徹夜までして――お陰で危うく電車で寝過ごしそうになったぐらい――なのだから、できている筈だ。


 だから綾瀬から、昨夜電話をもらった時は、試験中でなくて本当によかったと思ったものだった。

 

 生物が終わって気が抜けたのか、後のテストのできはさっぱりだったが、赤点さえなければそれでいい。



「どうする?」

 綾瀬に聞かれて愛美は、雑誌に目を落とした。


 しかし、迷うまでもないことだ。

 答えなど、初めから決まっている。


「マッドドッグをやらせて下さい」

「まあ、お前のことだ。そう言うだろうと思ったがな」


 綾瀬は、軽く喉の奥を鳴らして、椅子に深く身体を預ける。


 愛美がこの雑誌をもらってもいいかと尋ねると、綾瀬は今の状況では巴に調べられることはないので、その雑誌の記事が情報の全てだと答えた。


 愛美は、ソファに戻ると通学鞄に雑誌を仕舞う。


 吸血鬼をとり扱った記事を寄稿していたのが、愛美のよく知っている人間ハギワラであることに、愛美は最後まで気付かなかった。


 人の出会いは一期一会、それこそ縁なのだと、綾瀬一人が胸の内に仕舞い込んだ。


「紫苑の手が空いてる時は紫苑を、長門の仕事が片付けば、長門を使え」


 愛美は綾瀬の言葉に頷くと、冷めるに任せてあった紅茶を一息で空ける。手早く帰り支度をすると、愛美は後も見ずに部屋から消えた。


「今度は、違う終わりにして見せます」

 綾瀬の元には、言葉だけが残される。


 いつものポーカーフェイスのまま綾瀬は、それでもどこか悲しげに首を微かに横に振った。


 いつまでも癒えることのない傷口が、開いたままでいるかのようだ。

 時すらも、忘れることを許そうとしないのか。終わった筈のことが、まだ終わっていないと、全てはこれからだと囁くかのようだ。


「まだ、マッドドッグだとは決まっていない。吸血鬼が、吸血鬼だと決まっていないようにな」

 綾瀬は、深く煙草の煙を吸い込んだ。


 その顔は何かを案じているようでも、怒りを覚えているようでもあった。

 

 *


――今朝未明、新宿区内で、××さんは変死体で発見されました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ