#005「饒舌」
@三月家
タエコ「いくらなんでも、これは酷いと思うわ」
ユキコ「裁判長。今回の手口には、陰湿性と常習性が伺われます」
サチコ「でも、脱ぎ散らかしたままにしとく妙ちゃんだって」
ツルコ、テーブルの上のコースターを木槌で叩く。
ツルコ「静粛に。たしかに、幸子がやったことは許せない部分があります。ただ、妙子のお行儀の悪さに、まったく非が無いと認めることも出来ません。よって、過失相殺により、お咎め無しといたします。以上、閉廷」
ツルコ、再度木槌を振るう。
――ここは、応接間の隣にあるダイニング。もはや第何回目か分からない家庭裁判が無事に終わったところで、見分けかたの話を続けるわね。そうだ。せっかく四人集まったから、いまのあたしたちがどういう格好をしていて、このあとお風呂上りにどういう格好になるか書いておこうかしら。ボロを着ても心は錦、なんて言葉もあるけれど、こうやって見比べてみると、やっぱり内面は外貌にも表れるものだと思うもの。
赤裸々告白、一人目。鶴子=マーガレット。お姉ちゃんは、上がコーデュロイのブレザーで、下がタイトスカート。お店では、パンタロンに穿き替えてるわ。頼れるキャリアパーソンって感じね。長身で無いと様にならないから、ちょっと羨ましい。でも、湯上りにシルクのネグリジェを着るのは、いただけないわ。ナイトキャップがあったら、赤ずきんのおばあちゃんだし、ホットカーラーを巻いてたら、アパートで被疑者の隣に住むおばさんだもの。お隣さんなら、先週引っ越してったわよ、なんてね。
赤裸々告白、二人目。雪子=エリザベス。雪ちゃんは、上がカシミアのカーディガンで、下がフレアスカート。ワンピースを着てる時もあるわ。深窓の清楚な令嬢そのものね。細身で小柄な体型に似合ってるわ。寝る時だって、二重ガーゼで襟元や袖口にレースがあしらわれた、メルヘンチックなパジャマを着てるのよ。どこぞのお姫様かって話だわ。
赤裸々告白、三人目。妙子=エイミー。妙ちゃんは、上が裏起毛のパーカーで、下がベイカーパンツ。かけっこ大好きな元気印で、単車に乗るときは、レザーのライダースジャケットを着てるわ。ヘルメットを被ると男の子みたいなのよ。あたしに似て、あたし以上にオシャレさより実用性を重視するタイプで、湯上りは中学や高校で着てたジャージを愛用してるの。
これでおしまいにしたいところだけど、三人からクレームが付きそうだから、あたしも告白するわね。四人目、幸子=ジョセフィーン。あたしは、デニムジャケットを着て、サブリナパンツを穿いてるの。それで、入浴後なんだけどね。ウゥム。ここで、某香水の五番よ、なんて機転を利かせられるような大物女優じゃないのが悲しいところね。サラッというわ。スウェットよ。
何かしら? えぇ、そうよ。ノームコアよ。ユーティリティーよ。フン。可愛らしさや恥じらいのカードを捨てて、着心地と洗いやすさを手にしたのよ。誰が見るわけでないんだから、楽な格好をしたって良いじゃない。あたしには、その権利があるわ。寝間着選択の自由を、ここに宣言します。
本を小脇に抱えて、松明を天に掲げてるポーズをしてる場合じゃないわね。これでは、妄想の女神だわ。
さて。この調子で、もう何点かカミングアウトしていこうと思うんだけど、嫌悪感を覚えたら、その先を読まずに次のページに飛んで構わないわ。今度は、ちょっとデリケートな問題も含まれるから。筆を進めるのが躊躇われる部分もあるけど、忘れないように大事に書き留めておこうと思うの。




