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#004「女の敵は女」

@三月家

――これで五ページ目か。ページが進むごとに文字が乱雑になっていくものね。この辺で気を引き締めなくっちゃ。

さて。ここからは、家の中を探索しつつ、あたしたち四姉妹の見分けかたを書いていこうかしら。

まずは、玄関。ここには、コートを掛けて収納できる戸棚と、全身を映せる姿見があるわ。

端に揃えて置いてあるパンプスは、お姉ちゃんの。その横のローファーは、あたしので、そのまた横のヒールは雪ちゃんの。それで、そこに晴れ、曇り、雨と散らばってるスニーカーやブーツは、妙ちゃんの。仕様がない。お姉ちゃんに見付かる前に揃えてあげよう。妙ちゃんに貸し一つっと。

戸棚、オープン。一番右にあるソーダアイスみたいな色の上着は、お姉ちゃんのチェスターコート。これに限らず、お姉ちゃんの持ち物は寒色系が多いわ。知的インテリ女子らしいわね。その横のココアブラウンの上着は、あたしのピーコート。あたしの持ち物は、暖色系が多いわ。それから、その横のマシュマロか綿菓子みたいな色の上着は、雪ちゃんのダッフルコート。雪ちゃんの持ち物は、パステル系が多いわ。いかにも、甘口ゆるふわ女子って感じね。それで、一番左にあるカラスの羽根みたいな色の上着は、妙ちゃんのダウンコート。妙ちゃんの持ち物は、モノトーンかビビッドな原色かの二択ね。辛口マニッシュガールってところかしら。戸棚を閉めて、と。

玄関を上がって、すぐ左手にある部屋は応接間。ここにはソファーとローテーブルや観葉植物の他に、ガラス戸の飾り棚と本棚があるの。トロフィーや賞状、文集やアルバムなど、家族の思い出の記録が詰まってるわ。

生徒会役員や学級委員、学校行事ごとの実行委員を歴任したお姉ちゃん。コーラス部や合唱大会でピアノ伴奏を歴任した雪ちゃん。飾り棚に陳列された功績の大部分は、この二人によるものね。あたしも妙ちゃんも、できる限り肩書きを負わないスタンスだったから。

ついでだから、あたしたちの卒業した学校を書きとめておこうかしら。進路がわかれば、性格の違いに納得がいくと思うの。学校名は、ブランドイメージを守るためにイニシャルでお伝えするけど、関西圏、特に阪神間に暮らしたことがあるかたなら、すぐにピンとくるはずよ。小学校までは四人とも地元の市立校だから割愛するとして、中学校から見て行くわね。

まずは、お姉ちゃん。県立のエイ国際中学、同じく高校を卒業して、そのまま国立ケイ大学の法学部、法学研究科前期課程に進んだの。三月家唯一の修士さまよ。

順番としては、あたしが先に言うべきなんでしょうけど、先に雪ちゃんを紹介するわ。

雪ちゃんは、私立エス中学、同じく高校、そして同じく女子学院大学短期大学に進んだの。冬は濃紺、夏は真っ白なワンピースの制服で、地元の某エフ社の手提げを持って登下校していたといえば、もうお分かりね。

あたしもイニシャルにすれば私立エス中学になるし、最寄り駅も同じなんだけど、雪ちゃんとは違う女子校。そう。質実剛健な自立心の涵養がモットーの、あの学校よ。そのまま同じく女子高校、女子大学と進んだわ。余談だけど、女子校で一番恐ろしいのは、男性教員より年配の女性教員だと思うわ。あの十年間で、そのことを嫌というほど実感したもの。

残るは、妙ちゃんね。妙ちゃんは、市立エス中学、県立エム高校を出て、そのまま大学には進まなかったの。三月家で唯一の高卒よ。高校時代は演劇三昧の日々を送っていたわ。机に向かって勉強するより、実際に見て触れて体感で覚えるタイプみたいで、本人曰く、椅子に腰掛け続ける集中力は、お姉ちゃんと雪ちゃんに奪われたそうな。あたしに言わせれば、飽きっぽいだけだと思うけど。

こうして見ると、学歴の高さは身長と同じで、見事な年功序列ね。三歳差で二年ずつ早まってるから、お姉ちゃんが修士を取って大学を卒業したあと、毎年誰かが卒業する形になったのよね。お父さんは「今年は、とうとう妙子の番か」なんて、ハイボール片手に仰ってたって。ウイスキーに目が無いから、きっと向こうでも本場の味を堪能してることでしょうね。

あら、いけない。話が横道に入ってしまったわね。そうしたら今度は、本棚の写真を見ていこうかしら。ウフフ。面白い写真があるのよ。

ユキコ「幸子お姉さん、妙子ちゃんが」

ユキコ、ローテーブルの上に注目。

ユキコ「あら。アルバムを引っ張り出して、今度は何を始めるつもりなの? 日記もあるみたいだけど」

サチコ「ねぇ、雪ちゃん。妙ちゃんがチンチクリンのヒジキ頭をしてる写真って、どこにあったかしら?」

ユキコ「パンク系のミュージシャン役にあたった時の写真ね。文化祭の写真の中になくて?」

サチコ「あ、そっか。あれは文化祭の写真だったわね。それで、妙ちゃんがどうかしたの?」

ユキコ「雪子お姉さんのことを探してるわ。何だか怒ってる様子だったんだけど、何かしたの?」

――あらあら。ブーツの中に落花生を仕掛けたのに、気付かず履いてしまったのね。初歩的な悪戯なのに、毎回、引っ掛かるんだから。まったく、もう。共学校は御作法の時間がなかったのかしら? これに懲りて、必ず靴を揃えて上がるようになれば良いんだけど。


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