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なんか筆が乗ったんで翌日だけど更新。
……って言っても書いてたら長くなっちゃったので分割しただけなんですけどね。
ただ、分割したらそれはそれで短い…。
異世界への扉を手に入れた大樹達であったが、大樹は意外と臆病であった。
「まず、聞きたい事があるんだが。」
「何かしら。」
「マスターってどういうものだ?」
「マスターはマスターなの。この扉と契約を結んだ者のことかしら。」
「契約って何だ?」
「扉に血を捧げれば契約成立なのよ。覚えは無いかしら。」
この時点で大樹はこっそりとガッツポーズを作る。
先ほど血を付けたのが偶然トリガーとなった様だ。
(とりあえず通行権持ちは俺だな。後は何を聞くべきか…)
彼は知っていた。この様な事が起こる物語を。
そしてその中には帰ることが出来なくなったり、異世界に行けても酷い目に遭う主人公達が出てくる。
何も考えずに突撃するほど大樹は短慮ではなかった。
「それで、これを通ることで何か俺が奪われたりする事はあるか?」
「基本的にないのよ。」
1度安心した様にホッと息を出した大樹だが、精霊の言葉に違和感を感じたように警戒の色を再び強める。
「それじゃあまずは1つ頼んでいいか?」
「何なのよ?出来ることなら手伝うかしら。」
「そりゃあ頼もしいな。実は強制力とかあったりするんじゃないかと思ったが。」
そう言って精霊を心配するような顔を作ると精霊も何か申し訳なく思ったのか。
ふぅ、とため息をつくと
「実際、マスターからの強制力はやろうと思えば働くかしら。さっきからの質問も全部少しづつ私に影響を及ぼしているのよ。」
と返す。
「そりゃ、申し訳ないな。ところで、何故俺がマスターだってわかった?」
「さっきから影響が来てるって言ったじゃないのかしら。強制力を働かせている時点で貴方がマスターなのよ。」
そこまで聞いて、大樹は後ろで様子を伺っていたオッサンに目配せをすると、彼も頷く。
「それじゃ、一番大事なことだが聞くぞ。」
「はいはい、どうぞなのかしら。」
「…こちらの世界とそっち側にある、技術体系の違いを教えろ。そしてこの光の通じてる地点の説明もだ。」
「ッ!」
精霊の顔から余裕の色が消える。
「その様子だとやっぱり聞かれると拙い事だったか。」
「…しょうがないのよ。強制力には逆らえないかしら。」
危うくなにかの罠を踏まされる様子だった大樹は警戒を強めつつ話を聞く。
(強制力とやらも信じられるかわからないが一応話を聞くか。)
「まず、工業レベルはこの世界の中世。ヨーロッパが近いかしら。」
(最大手、テンプレ中世か。すると、付記事項は)
「でも、こっちには魔法があるのよ。」
(やはり。だが一番騙り易い題材でもある。)
「なるほど。他の世界からの俺みたいな人員の流入は?」
「魔法を聞いて驚かないのに驚きかしら。世界間の人のやり取りは多分マスターが初めてなのよ。こっちも契約に従うだけだからそこまで詳しくは知らないかしら。」
(情報の制限を確認、これで都合の悪いことは逃げられるか。)
「次に、この光の先だけどもただの森に繋がっているかしら。特別な価値は何も無いのよ。」
「森にいる生物はどうだ?魔法があるなら魔獣なり、魔物なりいると思うが。」
「…勘が良すぎるのも考えものかしら。実際、居るは居るけど対した奴は居ないかしら。こっちの猪位なのよ。」
(…本当ならあぶねぇ。猪が雑魚扱いなのも気になるがまあいい。大体の情報は引き出せたか。本当かどうかは別として。)
そう考えると大樹は光に近づく。
その瞬間精霊も期待感を募らせた様な顔になる。
「ついでにとりあえず聞いておこう。強制力を働かせる簡単な方法はなんだ?」
「命令って言ってから従わせたいことを言うのよ。私以外に効かないからあまり意味は無いかしら。」
精霊の顔はオモチャを貰うのが待ちきれない子供の様になっており、対照的に2人の顔は未知との遭遇に罠を踏み抜かないよう真剣な顔持ちになっていた。
雑貨屋の店内で起こった異変は店の客足の無さと乱雑な売り物の山によって表からは見えていなかったが、大樹がUFOキャッチャーに触れてから、既に30分が経過しようとしている。
いつ、別の客が来て騒ぎになってもおかしくは無かった。
「じゃあ一回試させてもらうぞ。」
「出来れば貞操に関わることはやめて欲しいのよ。」
「いま墓穴掘ったな」
「…ほんとにやらないで欲しいのよ。」
「安心しな。今はそんなことやらないから。」
「命令。全部止めて最初の箱の形に戻せ。」
しばらく異世界行かない予定です