神と人の絆
なぜ……消えてないんだ。
ディードは精霊またはそれに関するものは消える、という絶対の理を世界に与えたのに消えないアマルトと言う少年を凝視する。
そういえばラグニアの力が発動しなかった……あの少年のもつ剣は能力無効化の力がある。
ならば。
ディードは自らの力、好きなものに好きなものを与える能力『恩恵』でアマルトの『神断.剣』を無効化する恩恵を与える。
アマルトの『神断.剣』は輝きを失わない。
ならば。
アマルト自身に死の恩恵を与える。
アマルトは倒れず、鼓動を刻み続ける。
「なぁ……アマルトよ、お前はいい剣を持っているな」
ディードは静かにアマルトに言葉をかける。
「なんで、僕の名前を……!? 」
アマルトは驚愕する。
「驚くことは無いだろう、そうだな自己紹介をしようか、俺は全て世界の全てと『神』を創造したもの、完全たる無限と理すら超越した、絶対的超越者『神Re』の存在だ」
ディードがそう言うと
「なぜ、僕たち『精霊』を滅ぼそうとする」
アマルトは問いかける。
「『精霊』……かつて俺は人による人のの統治の理念を掲げた、しかし人は小さく弱く脆く移ろいやすい者、それでは幾多数多、星の海ほどいる人を管理はできない、ゆえに俺は人に神の力と精神を与えることにした、ある青年がその白羽の矢は当たった、彼は一つの世界を統治した、それはいつか来る終焉の時まで変わることなく続くと思われた、しかし彼を愛する女が、ありえない現象、自力での神の力の覚醒を引き起こし、彼と共に消滅する道を選んだ、『精霊』とはこの世界の歪みだ、歪みは新たな歪みを起こす、『精霊』が侵食した世は歪み、俺たち『神』に必要なエネルギー『知』と『能』を得られない、いわば隔絶した世界となる、よって『精霊』は排除しなければならない」
ディードが淡々と言うと
「そんな……、勝手があるか! 」
アマルトは怒鳴る
「勝手に創り、勝手に選び、勝手に弄り、勝手に失敗し、勝手に僕たちを消そうとする! 勝手勝手! 勝手すぎる! 僕たちはお前たちの玩具じゃない! 」
アマルトの怒濤の言葉の槍による攻撃。
「勝手か……、世界の基点は『神Re』にある所詮『人』であるお前たちには勝手に映るだろう」
ディードがそう言うと
「傲慢な神め……! 」
アマルトは睨みつける。
「傲慢……ね、では俺たち『神』は君たち『人』にとって都合のいい奴隷であり、道具であり、燃料であれと? それは傲慢では無いのか」
ディードがそう言うと
「正解とは個に宿るもの、お前と俺は相容れない者同士だったということだ……そして今から消えるお前に正解は語れない」
ディードは自らに『消滅』の『人の技』の恩恵を与える
ディードは指先にただただ消滅を集める。
『神断.剣』は神を断つ剣、『人の技』である『消滅』の前ではただの光る剣でしか過ぎない。
ディードはそう考えながら、アマルトに消滅をぶつける。
しかしアマルトは消滅を切り払い、ディードの喉元を剣の切先を付ける。
「お前は世界の中心過ぎた、お前の力は、お前という存在に引っ張れられ、『神の力』になる、お前は『神Re』でるがゆえに僕には勝てない」
アマルトはディードを見つめる
「俺を殺すと? しかし俺を殺せば世界は基点を失い緩やかな崩壊を迎えるぞ、お前に世界を滅ぼす覚悟はあるのか? 」
ディードがそう言うと
「いや……違う、歩み寄ろう、僕たちはたしかに違いすぎる存在、しかし心があるのなら歩み寄ることもできる、俺たち『人』はそうして生きてきた、お前たち『神』だって、きっとそうだ……だから手を取り合おう」
アマルトはディードの目を見つめる。
『神断.剣』……これは人と手を取り合えという、サクシヤの神託なのかもな。
ディードはそう考え
「いいだろう」
そう言って、ディードは少し微笑む
「これから、よろしくな」
アマルトは手を差し出す。
「ああ」
ディードはアマルトの手を握る
「お詫びだ」
ディードは全ての『精霊』と『界間游游砦船』を元に戻した。




