絶対の絶望
「いい男……だけどピスティちゃんにあげるわ、私もうお爺ちゃんにマーキングしちゃったし」
ラグニアがあっさりとしかし残念そうにそう言うと。
「わかりました」
ピスティが蒼炎の剣でアマルトを切りつける。
アマルトは自らの手に持つ『神断.剣』で受ける。
蒼炎の剣はけむりのように消えたが、もう片方の手に蒼炎の剣を生み出す。
アマルトはその剣も受け止めようとした瞬間
後ろから何かが迫って来る感覚がした。
大きく上にアマルトが飛び上がり、下を見ると。
2本の内1本の蒼炎の剣が浮いて、自分で動いていた。
「バレていしまいましたか」
自分から離れた位置に降り立つアマルトを見ながらピスティはそう言う
「私の『劫火剣乱』は蒼炎の剣を幾多も創り操る、あなたとのその剣とは相性最悪ですよ」
ピスティはシャンデリアの如くか輝く蒼炎の剣の群れを背中に、そう言ったあと手を前に突き出すと、蒼炎の剣は縦横無尽に動き、アマルトを狙う。
「ぐ……! 」
アマルトは全方位からくる、青い十字架に辛うじてしか対応できない。
「ピスティちゃんは見かけによらず激しいのね、あれじゃあ、すぐ逝ちゃっうわ~、いい男なのにもったいない~」
ラグニアが惜しそうにそう言うと
「おや、ロマンスグレーはお好みでないと? 」
ローデユラがそう言いながら、黒い紙をラグニアに投げつける。
「ロマンスグレー? 面白いお爺ちゃん」
黒い紙を掴み握りつぶしながら、そうラグニアは言う。
「な……馬鹿な……! 」
ローデユラは驚愕する、黒い紙『死の神』は触れた命を問答無用で殺すもの、それが全く効いていないからだ。
「ふふ……私のこの服、『アヘラの婢衣』は私の死体を纏い、そして私を殺したものの攻撃を一切受け付けなくさせる力……あなたの全ては私のいいなりよ」
ラグニアはローデユラの老体を容赦なく殴りつける。
「もうおしまいですね……」
ピシティはアマルトそして精霊を嘲笑う
「おしまいはお前だ……」
アマルトは剣を投げつける。
「馬鹿が」
ピスティは簡単に避けるが
「ガ……!? 」
ラグニアの豊満な乳房を貫き、心臓を貫く
もちろん神そのものを断つ『神断.剣』の前では『淫姫の轉生』は無力。
本当の意味でラグニアは死んだ。
「クソッ!! 」
自らの失態で戦力を減らしてしまった、ピスティが舌打ちをすると。
黒い紙『死の神』がピスティの頬を撫でる。
「グ……まぁいい、ディード様がもうすぐ降臨なさるからな」
そう言ってピスティは死んだ。
「やっと終わった……ていうか、ディードって誰だ? 」
アマルトがそう言った瞬間
「ああ、俺のことだ」
見知らぬ男ががそう言った。
主神級すら、そこらの地を這う蛆虫に見えてしまうほどの、存在感を醸しながら、男は
「俺の名はディード……『神』を遥かに越えた者『神Re』だ……」
そうディードが言った瞬間、ローデユラもエナもすべての精霊も、『界間游游砦船』も消えた、アマルトとディードと世界以外の全てが無になった。
「…………」
ディードは何も感じさせない瞳でアマルトを見つめる。




