神の力 人の力
異様に広く、不気味なほど静寂な部屋にアマルトとエナは二人ポツンと浮いていた。
「能力の検査……と言っても、今のあなたは精霊としては生まれたての赤ん坊、ただ息をしているのと変わらないわ、だからまずは立ち方……精霊としての力の使い方から教えるわ」
エナはそう言うと、左手に赤々と痛いほど光る炎の塊を、右手に両端に持ち手のある錆びた剣を出した。
「この二つの違いが分かる? 」
エナはそうアマルトに聞く
「炎と剣? 」
アマルトは首を傾げながら、とりあえず見たまま感じたままの事を言う。
「まぁそうよね、でも、集中してみて、先入観を取り払って生まれたままの感覚で見て」
エナは真剣な顔つきでそう言う。
「生まれたまま……」
アマルトは自然とエナの言葉に従う。
アマルトはエナの左手と右手に在るものを感じる。
「左の……炎はどこか……懐かしい……暖かい、感覚がする……右の剣は……何か……得体の知れない……でも、力強く頼もしい、感覚がする」
アマルトは自らの精神の赴くまま、言葉を放つ、それはもはや無意識に近い領域だった。
「そう、正解よ」
エナはそう言い、少しだけ微笑む。
「正解したの? 」
アマルトはいまいち実感を得ない。
「左の炎『嚇炎の赤灼』これは『人の技』と言って人としての力が中心なの、そして右の剣は『aspis:intericere』これは『神の力』と言って神としての力が中心よ」
エナはそう言うと、左右の力を消した。
「じゃあ俺は『人の技』の方が得意なのかな」
元人間のアマルトはそう言う
「さぁ? 元が人でも『神の力』が得意なんても山ほどいるわよ、まぁ、どちらにせよ私は、あなたの力を見つけ高める事はできないのだけれどね」
エナは首を横に振りながらアマルトにそう言う。
「え!? じゃあどうすんの? 」
アマルトを目を大きく開き素っ頓狂な声を出す
「時が来れば目覚めるわ」
エナはただそう言った。
「じゃあ検査できないじゃん」
アマルトが口を尖らせ不満げに言うと
「検査とか言っているけど正直に言うと検査というより、どちらかというと力を見せるのが中心ね、これがきかっけで目覚めることもあるのよ」
エナは整然と言葉を放つ
「まぁ……そうか」
どうも脈絡を得ない感じだが、別にどうでも良かったのでアマルトはそう返事をしておく
突然、赤い光をけたたましい不快音が空間を支配する。
「南西方面より敵襲です、属神級12,687、正神級3,098、副神級56です、南西方面より敵襲です、属神級12,687、正神級3,098、副神級56です」
何度も南西方面より敵襲です、属神級12,687、正神級3,098、副神級56ですのフレーズを機械的に繰り返す女性の声も響く。
「敵襲とかヤバイよ」
アマルトが焦っていると
「まぁそうね、でも月一でこれぐらいのことはあるわ」
エナは冷静に返す。
「え? そうなの? 」
アマルトは月一で起こる敵襲に恐怖しつつエナに聞くと
「前にも言ったと思うけど副神級の一部と主神級以外は取るに足らない雑魚よ」
エナは淡々と言う。
アマルトとエナが談笑していると、いつの間にか
何度も南西方面より敵襲です、属神級12,687、正神級3,098、副神級56の繰り返されすフレーズに
「特別警戒の副神級、A+が1、Cが2です」
が追加されていた。
「……いつもよりは、危ないかもね」
エナは少し険しい顔でそう言った。
「え? 大丈夫? 」
アマルトはそう言う
「まあ、大丈夫だとは思うけど、一応、安全のためあなたはここに私といてちょうだい」
エナそう言いながらは端末の様な物を操作する。
大丈夫かな……
アマルトはそんなことを考えていた。




