非日常は突然に。
『フレイヤ手記』「人と神」
「あなたがアマルト・カッルトね」
「き、君は誰? 」
「私はエナ=トゥーラ」
少年アマルト・カッルトはエナ=トゥーラと名乗る少女と出会う。
「一体、なに? 」
アマルトは目の前の、神秘的な銀色の髪をなびかせる少女に、たくさんの恐怖と一つまみの見惚れに支配されながら、言葉を紡ぐ。
「あなたは『精霊』になったの」
エナは氷のように冷たいが、木漏れ日のように優しく、そう言った。
「『精霊』……? 」
アマルトはそう言って首を傾げたが、エナは答えることはなかった。
「まずい! もう見つかったの!? しかも『主神』……! 」
エナは今までの雰囲気からは想像もつかない程、慌ててアマルトの手を掴み、幻想的なほど醜く、冒涜的なほど美しい、扉の中に入っていった。
アマルトとエナの体が竜巻の中のような感覚になりそうなほど、強いなにかが渦巻く感覚にしはされる。
「い、一体なに!? 」
アマルトは力強く握られた手の痛みを忘れてしまうほどの出来事に声を絞り出す。
「敵よ! 私たち精霊の敵……神が来たのよ! 」
エナは叫ぶように返す。
「精霊? 神? 敵? 意味が分かんないよ!? 」
アマルトも叫ぶように返す。
「説明は後! 今は逃げるのよ! 」
エナはそう大声を放つ。
アマルトは何がなんだかわからないまま、しばらく経ち、大きいが、古いつくりに見える船が見えた。
「ここまでくれば……」
エナが安堵の声を出すと。
アマルトの視界と意識が光に塗りつぶされた。
......................................................
「……? ここは……? 」
アマルトは目を覚ます。
まず視界に入ったのは、木造の質素な部屋
そして右のほうを向くと、エナの姿が見えた。
「おはよう、さっきはごめんなさい」
エナは軽く頭を下げる。
「あ……こちらこそ」
アマルトも反射的に頭を下げる。
「クスッ……」
エナは少し静かに笑ったあと
「じゃあ……早速で悪いんだけど、今のあなたの状況を説明するわね」
エナは少し厳しい顔つきになる
「…………」
アマルトは息を飲む。
「そうね……まずは『神』と『精霊』について説明がいるわね」
エナは顎に手をやりながらそう言った
「『神』……? 創造主のこと……? 」
アマルトは首をかしげる
「う~ん、そうとも言えるし、そうとも言えない、と言う感じかしら、ごめなさいまだそういうのは分からないは、でもこれだけは憶えていてちょうだい……神は私たち精霊を消そうとする敵よ……! 」
エナの顔付が厳しくなる。
「敵……! 」
アマルトはその物々しい雰囲気に飲まれ、息を飲んでしまう。
「そうよ……敵よ」
エナは念を押すようにそう返したあと
「そもそも精霊というのは神の力を持った人の事を言うわ」
エナは言葉を続ける
「なぜ……神の力を? 」
アマルトは疑問に思ったことを口に出す。
「さぁ、わからないわ、そもそも、わからないことが多いから私はたぶんあなたの質問に答えることは出来ないわ……だから今から私の知っていることだけを話すから聞いてちょうだい」
エナはアマルトの目をジッと見つめる。
アマルトがコクンと首を縦に振ると
エナは言葉を紡ぎ始めた
「精霊とは神の力を持った人である、そして自らを神と名乗り、精霊を狩る者たちの事よ…そして神もまた人の力を持っている、ただし精霊と違って神の力の方がベースの存在だけれどね……そして神には四つのランクがあるわ、一番弱く神たちから『天使』や『悪魔』と呼ばれる、知性の存在しない異形の存在『属神級』、二番目に弱く神たちから『管理神』と呼ばれる、わずかに知性があり獣の姿の『正神級』、正直この二つのランクの神は弱いわ、平均的な実力の精霊なら簡単に倒せる雑魚よ、でも二番目に強い神たちから『統率神』と呼ばれる『副神級』、知性が有り人と人以外のなにかが合わさったような姿をしているわ、この中には結構厄介なのがいたりするわ、そして一番の問題である、神たちから『主神』と呼ばれる『主神級』、完全に人の姿をした存在で極めて危険な強さを持っているわ」
エナがそう説明する中
「あの~、なんで『主神級』だけそのままなんですか? 」
アマルトはどうでもいい質問をすると
「名前を決めた奴が適当だからよ」
エナはそう言った後
「でも、私たちもただのやられ役じゃないわ、ここは、私たち精霊の本拠地『界間游游砦船』……神々を迎え撃ち精霊を守る、世界を渡る要塞船よ」
エナはニヤリと笑った。




