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ダンジョンを貰った!

 ゴールド15年、ヴェルバロースの月、イストイェーガーの日。

 ついにダンジョンを貰えた。これで自分達一族の間では一人前として扱われる。

 Mの一族として、誇りを見失わないように頑張りたい。

 記念として日記をつける事にした。

 いつまで続くのか不安だが頑張りたい。








 ヴェルバロースの月、ガルトマーターの日。

 飽きてしまった。ぶっちゃけ魔物が言うことを聴かない

 そもそも、自分が産み出せるのはlevel1〜2。つまり最高でも獣classである。

 その獣ですら言うことを聴かないとか、もういやだ。

 折角創った癒し系アイドル『見つ目犬』ちゃんも言うことを聴かない。

 威厳が必要なのだろうか?

 試しに偉ぶって命令してみた。

 下克上された。

 知っての通り、我々M一族は魔物を操れる変わりに戦闘能力がからっきしだ。

 だからってこれはないんじゃないか? と疑問に思った。

 軽く自己嫌悪。

 仕方ないのでご飯を食べる。『見つ目犬』ちゃんはそっぽを向いてこちらを向こうともしない。

 果たしてこれでいいんだろうか。










 ウェブルー5、モスタビヴィアの月、ルスマーディルクァの日。

 びっくりした。三日坊主どころか二日で止めてしまっていた。物凄い埃を被っていた。

 それどころか十年たっている。何かの魔術攻撃だろうか? 謎は深まるばかりだ……。 しかしこの十年。何もしていなかった訳ではない。

 『見つ目犬』ちゃんとは友好関係を築き上げ、何とご飯時に目を合わしてくれるようになったのだ。

 三つめのくりくりしたお目目がちょーきゅーと。ラブリーである。

 しかし、かと思えば次の日には『見つ目犬』ちゃんは侵入者に殺されてしまった。どうやら侵入者はF一族だったらしい。くそっ、神様にお祈りだけしとけし。

 もっとモフっとけばよかった……。

 仕方ないのでもう一匹召喚。

 自分の魔力では一匹が限界なのである。

 ドキドキして心臓が破裂しそうだった。そして出てきたのはなんと! 『軽やかなヒストロウ』の養成体だった!

 育てればlevel三にもなるちょーきょうりょくな助っ人である。

 少し外見がぐろてすくだが、愛情を持って育てればきっと可愛い。

 そう、例えその姿が足が百足、身体が人間、腕が蛇、頭が甲虫の幼虫のような姿でも!










 モスタビヴィアの月、フィルソルトの日。

 召喚した喜びで昨日の自分はどうかしてたんじゃないかと思う。こんなぐろてすく星人を可愛いとか思える奴はあほ。

 しかし、それでも育てなければなるまい。自分が創ったモンスターである。

 餌を調べると、蜂蜜が好きらしかった。『見つ目犬』が使っていた皿に垂らし、目の前に置いてやると凄い勢いで食べ始めた。

 しかし、コイツ案外可愛いんじゃないか

 ……はっ、自分は何を言ってるんだ!










 モスタビヴィアの月、スーシレンシスの日。

 今度はUの一族がやってきやがった。ばーかばーか! 引きこもりが何のようだ! お前らなんて一生引きこもってろ! って云おうとしたけど強そうだったから止めた。ていうか、“破滅”とか来るなんて聴いてないし。

 しかし、昨日の今日で召喚出来る程自分の魔力は多くない。

 しょうがないので土下座で勘弁してもらった。ついでに魔力もちょっとばかしもってかれた。くそっ、ふぁっきん。









 ナユハの月、シースマドーの日。

 なんと後ちょっとで一カ月。時の流れを感じながら最近やけに大きくなった

 『軽やかなヒストロウ』、略してヒス郎は元気に訓練している。最初は私の掌くらいだったのに、今では私の二倍くらいになってる。ちょーきもい。

 “最大のタイタン”は二万ちょっとの大きさらしい。あまりに大きさにエアフィルターを突き破ってしまうので、仕方なく深海で体育座りしているらしい。やばい、ちょーかわいい。いつかコイツもそんな感じになったらいいのに。

 ……想像したらちょーきもかった。










 ナユハの月、ルスマーディルクァの日。 なんと二匹目を呼べるようになっていた! きたこれー!

 さて、二匹目を呼べるようになったなんて、自分的には歴史的快挙だ。

 よって、今日は、なんと、指定召喚をしてみた(ドドンっ)

 これさえ出来れば自分だって一人前と呼べるだろう。

 さぁ行くぞ、K一族の血に『まだら色のシュラス』の死体!

 これで自分も一人前だ、そう思っていた時期が、私にもありました。

 まさか『まだら色のシュラス』が……子供のままなんてぇぇぇぇぇ!

 シュラちゃんを抱えて友人に相談しに行ったらあいつ!


『そりゃK一族の血を使えば当たり前。むしろ、なんで考えなかったの? 相変わらずどっか抜けているね』


 なんて言いやがりましてよ! むきー!

 ……K一族はどうやら身体が成長しにくいらしい。初めて知ったわー。だからあいつら五百歳越えてもロリショタなのかー。

 大人版シュラちゃんの尻尾でもふもふしたかったが仕方ない。小さくても需要あり。むしろステータス。まだら色の身体にもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふ……かゆ……うま……









 ナユハの月、フィルソルトの日。

 はて、昨日シュラちゃんをもふもふしてからの記憶がないぞ。何か有ったんだろうか。日記を読み返してもさっぱり分からん。 とりあえず触れないようにしておこう。自分の第六感がそう告げている。

 シュラちゃんは雌であった。まるで貴婦人のように凛としている。

 ヒス朗に合わせたら狐に似た身体をブルブルと震わせていた。どうやらヒス朗が苦手らしい。まぁ、仲良くしてくれればいいなぁとは思う。

 アドバイスを聞きに久しぶりに穴蔵から出る。太陽が「あっ? 誰だお前?」と言わんばかりに照りつけてくる。えぇい鬱陶しい。

 しかし嬉しい事があった。

 “総代のフォンティーヌ”さんが街にいたのだ!

 level10を数百匹従えている凄いお方である。

 コツを教えて下さいと言ったら快く教えてくれた。

 一匹一匹をゆっくりと育てる事が大切……らしい。基礎の基礎じゃん、とか言ったら、そう言ってる間は意味が分かっていないと言われた。

 流石達人、きっと自分なんかでは思いも寄らない境地に達しているのだろう。

 とりあえずヒス朗の鱗を磨いてあげたりした。ヒス朗は気持ちよさそうに頭を揺らしていた。

 ……ごめん、やっぱ怖い。










 ニベルスーグの月、ロウトキスの日。

 散々だった。日付が飛んだが、サボっていた訳ではない。

 P一族の“病弱のガルシア”がうちに来たのだ。

 M一族はダンジョンとして侵入されたら戦わなければならない。そういう使命なのだ。

 しかし、P一族は言うまでもないがM一族の天敵である。

 抵抗する間もなくヒス朗が死に、シュラちゃんも討たれた。

 腹がたったので戦闘能力の有無なんぞ気にせず特攻したら瞬殺された。

 C一族の人が助けてくれなければ今ごろは土だっただろう。

 しかし、心の友だった二人が死んだのは悲しい。折角ヒス朗ともお風呂入ったり、シュラちゃんと一緒に昼寝したり出来るようになっていたのに。

 初心に返る事にした。

 強いの一体二匹ではなく、弱いのを十体二十匹集める事にした。

 level一のスライム君だ。

 スライムはlevel十まで育つ素質があるが、いかんせん死にやすいしlevelが上がりづらい。まぁ二十体も呼べたからそこは僥倖。

 それに意思疎通もあまりできない。悲しいけど暫くはこのプルプルを見るだけで癒されよう。

 シュラちゃんを思い出して少し泣きたくなった。










 ニベルスーグの月、修羅の日。

 修羅の日なので今日は家で大人しくしてよう。

 スライム君の調教は難しかった。自分達M一族はまず最初に触れ合って仲良くなる。しかし、level一のスライムだとそれもできなかった。攻撃方法が酸性の身体で体当たりなのだ、それに触れるのは自分からダメージを負いにいくようなものだ。

 それでも頑張って触れてみたら見事に火傷のような傷跡が出来た。仕方ないので治癒呪を巻いておく。

 スライム達は思い思いに、良く言えば自由に、悪く言えば勝手に過ごしていた。

 落ち込む。M一族の恥曝しだ。

 このままではいけないと座学を少しやってみた。五分で飽きた。なんせスライムの項だけで百ページ以上あるのだ。モンスター心理学見地から判断するスライムの行動だの、モンスター哲学における矛盾の追求だの、誰が読むんだよ。相変わらずL一族は意味不明だ。

 愚痴を言っても現実が変わる訳ではなし。仕方ないので根気強く読み進めた。










 ニベルスーグの月、フォルクェルの日。

 辞書に世界地図が出来ていた。

 何が起こったのだろうか。新手の魔法攻撃か?

 ベトベトになった本は燃やし、新たな本を注文する。三秒で届く。

 今度は珈琲片手に本を読み進めた。寝たくても寝れない。

 ふむ、どうやらスライムはある程度放置して育てるのが正しいらしい。栄養は魔力だけで良いと。

 何でも、level二になると僅かばかりだが意志が芽生えるらしい。

 これはいい事を聴いた。頑張ってみよう。

 蛇足だが、単細胞生物として産まれた我等が最終的に多細胞生物になるのは自己否定ではないか? という疑問がスライムの問題らしい。自分にとっては、スライムが自分より難しい事を考えてる事の方が問題だ。










 ニベルスーグの月、ローズバーテルの日

 スライム達が今日もうにうにしてる。

 モンスターは大雑把に分けると二種類ある。他者を倒す事で強くなる戦闘タイプと、術者からの魔力で強くなる育成タイプだ。大雑把過ぎる気もするが、L一族のはこざっぱり過ぎて二千を超えるタイプ分けをしている。うちゅうのほうそくがみだれる! とか言いそうで怖い。……いや、それはJの一族だな。

 ちなみに一日開いたのは父親のスライムを見学してきたからだ。未来の自分、勘違いするなよ。

 level6のスライムは自立行動も可能だった。頼めば難しい事もしてくれるらしい。しかも人型! level5から人型。level6から自立行動可能。level7は魔法行使。level8が分離行動、level9が無限再生、level10は魔王、つまり国一つ滅ぼせるらしい。ちょーすげー!

 そんな訳で、頑張ってスライムを育てようと思った。










 ニベルスーグの月、ルスマーディルクァの日。

 スライムが全滅した。よりにもよってV一族である。

 もういやだ……。

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