story3 ドSな神様と驚愕する俺(とたってる○○)。
またまた意外に早く更新出来ました。良かった。
――サブタイトルですが、「何が?」と純粋な心で疑問に思える方は何人いらっしゃるのか。(※この小説はR15指定ですし……)
あ、えっと、前書きから何かすみません……。
俺は驚愕していた。
ドSな神様の映像が消えてから、じっとしていても始まらないと森の中をぶらぶらと当ても無く歩いていた時だった。
百キロも離れているらしい一番近いという街に着く前に餓死してしまうだろう、などという常識的だが最悪な考えを打ち消して、前に進む脚だけに意識を集中していた。まぁ、簡単に言うと、俺は現実逃避をしながら歩いていた訳である。
街の方角も分からない為、ひたすら真っ直ぐに進んでいた。森からは脱出出来る気配が無いし、北なのか南なのか西なのか東なのか、自分がどちらに向かって歩を進めているかも不明な中、俺が高校の制服であるブレザーの内ポケットに携帯が入っていることを思い出したのは偶々だった。今思い出さなくても、いつかは思い出しただろうが。
そして祈る――無論、神以外の何者かに向かって、だ――ような気分で二つ折りのそれを開き、俺は驚いて思わず「天恵!」と叫びたくなってしまった。勿論、神に感謝など覚えたくはないので叫ばなかったが。
何故、俺が驚いたのかと言うと――
たっていたのである。
いや、「何が?」って、決まってるだろ。
というか、携帯という言葉が出てきた時に分かっていたよな?
え? 俺は今誰と話しているかって?
それは、あれだ。エア友達?
うん。すみません。ちょっとメタな発言しただけでございます。森の中で独りはかなり寂しいっつーか心細いっつーか、とにかく誰かと話したくなるんだよ。読者様に話し掛けたって少しくらい赦してくれ。それでなくとも今回はカギカッコーが少ないのに。
――ってあれ、何で皆、蜘蛛の巣に引っ掛かった揚羽蝶を見るような目で俺を見てんの?
エア友達? やだな、元の世界に友達くらいいるって。
何か大幅に話がずれたな。で、何だっけ。
あ、そうだ。たってるって話だった。
簡潔に言うと、電波のアレが、三本とも立っていたのである。
「絶対圏外だと諦めていたのに……」
俺が思わず独り言を呟いてしまうくらい、この現象は定石に反していた。
スマートフォンとかに買い換えてなくて良かったと心の底から思ったのは俺が初めてじゃあなかろうか?
あのサド神は「異世界勇者召喚」とか馬鹿げた事を言っていたが、仮に俺が勇者だとしたら、異世界召喚早々、携帯で元の世界と連絡を取れるだなんて、普通無くね? 何か俺、史上初っぽい事をしようとしてるぞ。ここはテンプレからちょっと外れている。――と、信じたい。
だが。
ヤバい、どうしよう。
正直言うと、ちょっと不安だ。だって、異世界から携帯電話掛けたら何処と繋がんの? 日本人がちゃんと「もしもし?」って言ってくれるかな? ハローとか言われたら即行切るぞ俺は。
人間が出てくれんならまだ言いよ。
あのサディスト(神様)が出て「残念でした〜」とかの台詞をモンハンの「美味しく焼けました〜」的なリズムで言われたら俺はもう可笑しくなってしまうだろう。色々と。
後、ホラーな感じになったら嫌だ。電波とか通じて霊が……っていうの、どっかで聞いたし。
それに、ここは異世界なんだ。モンスターとか魔物とかが「がうぅ?」って携帯越しに言ってきたらどうするよ? さっきの声、妙に可愛かったけれども。
だが、覚悟を決めた。
確かに、何処に通じるかなんて分からない。あのサド神が出たら最悪だ。しかし、何処かで沢山間違って上須永莉乃が出たら最高だ。気まずくなると思うが、告白の続きが聞けるかもしれない。携帯越しなのが非常に残念なのは仕方無いとして。
まずは、無難に自分の家に掛けてみた。
「……」
携帯を耳に当てたまま、待つこと数分。
――誰も出ない。
まぁ、これは予想の範囲内。
普通に家に繋がっているのなら、俺の家には今誰もいないからだ。
俺が召喚された時間は放課後だった。元の世界とこの世界――異世界の時間軸がリンク、というより一致しているのなら、今元の世界は変わらず放課後の筈。ならば義妹は部活中、義理の両親は会社である。
義妹も義理の両親も出られないかな、と思いつつ、俺は次に義妹に連絡した。会社にいるであろう義理の両親に掛けるのは躊躇われた。部活の活動を軽く見ている訳ではないが。
そしてそれは結果として正解だったのだろう。
『おっおおお、お兄ちゃん? どっどどど、どうしたの? いっいいい、何時もメールなのに』
不思議というか奇妙というか奇抜なリズムで吃る義妹の声が、一回目のコールも終わらない内に聞こえてきたのだから。
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