story2 ドSな神様と憤る俺。
何か、意外に早く二話目が投稿出来ました。文字数が少ないからかな?
で、本当にここは何処なんだ。
神様の悪戯により異世界に飛ばされた俺、神薙或瀬は、ぽつーんと一人で森の中に突っ立っていた。
周りを見回す。当たり前だが、木と草と蔦くらいしか見えない。
チチチ、と鳥だか虫だか分からない鳴き声が聞こえてくる。いや、鳴き声だかも分からない。
「異世界の何処だよ、ここは」
俺は苛立った声で言う。枝と枝、葉と葉の間から降り注ぐ木洩れ日に照らされる森に、その声がやけに反響した。
だが、それは残念な独り言などではなく、向けた相手はちゃんといる。
『さぁ?』
そしてその相手は、無責任にも程がある言葉を発し、わざとらしく首を傾げた。
「可愛い子ぶってんじゃねぇよサド神」
『嫌ね、可愛い子ぶってなんかいないわ。だって私は元々可愛いもの』
うぜぇ。
目の前の相手に呆れ過ぎて声も出ない。
目の前の相手――自称「神様」の女性は、ふわふわと宙に浮いていた。
長い金髪に整い過ぎて神秘的な雰囲気を醸し出す顔立ち。プロポーションもルックスも完璧な、本当に神様――というより天使とか妖精のような女性だ。
――喋らなければ。
「俺を元の世界に還せ」
『それは無理よ。得てして異世界勇者召喚とはそういうものでしょう』
「誰が勇者だ。つーかお前が俺を召喚したんだから、還せる筈だろ」
『……神に帰還の手伝いは出来ません』
「今、ちょっと間があったな? 還せるんだな、俺を。よし、還せ」
『我が儘ねぇ』
「ふざけんなドS!」
とかやってても、何も解決しない事に俺はやっと気付く。とにかく、彼女に頼んで還してもらうのは無理そうだ。まぁ、最初から分かってたけどな。
「何で俺を召喚(?)した訳?」
『面白そうだったから』
「うん、そんなこったろうとは思ってたよ。で、本当の理由は?」
そこで何故かサディストの神様は頬を赤らめて。
『や、やだわ或瀬くん。言葉攻めなんて』
「お前マジで病院行け。精神科か脳外科(なんてあったっけ?)を推奨する」
『病院!』
「何だよ、人体模型にでも取り憑きたくなったのか?」
『病院で或瀬くんを虐め倒す……良いわぁ』
「あー、俺これから健康優良児目指すわ。絶対ぇ病院行かねぇ」
そんなっ! と大袈裟に叫ぶサド神を無視し、俺は質問を続けた。
「じゃ、何で召喚されたかは脇に置いておく。それより訊きたい事がある」
『なぁに?』
ふわふわと漂う神様。真っ白なワンピースの裾が揺れる。
清楚なイメージのあるその服は、全く神様に合っていない。外見は良いけど、中身が。
「何で、俺が告白を受けてる時に召喚したんだよ?」
これだ。
俺が本当に目の前のサディストにムカついたのは、これが理由だった。
だって、そうだろう?
あんな、ファンクラブまであるような美少女に告白されたら嬉しくない訳がないだろう?
しかも、良いのは容姿だけじゃない。性格も良いし、勉強も運動も出来る。こんな、自分には勿体無いと思える完璧美少女に告白されたいと思うのは間違いか?
間違いじゃないだろ?
なぁ、全国の男子。
ちょっと夢見るのくらい、赦されたって良いよな?
上須永莉乃。
難攻不落の姫様と呼ばれる完璧美少女だ。
振るつもり、だったけど、嬉しいという気持ちはあった。もし彼女と付き合って目立たなくて済むなら、俺は一も二もなく彼女の彼氏になっていただろう。リア充人生まっしぐらだっただろう。
だから。
せめて、彼女の――上須永莉乃の「好きです」という可憐で凛とした声を聞いて脳と心に刻み込んでから異世界に飛ばして欲しかったのだよ。
サディストゴッド、ドューユーアンダスタン?
『えー、だってぇ、或瀬くんが幸せを得るとか、本当赦せないんだもーん』
「だもーん、じゃねぇよ! アンタ本当に神様だろうな!? 人の不幸に悦び過ぎだろ!」
『それが私の個性』
「キリッとした顔で言うの止めろ、殺すぞ」
『神様殺したら駄目だって。というか、今の私の姿は映像だから、今は殺せないよ』
映像って。プロジェクターとか何処にあんだよ。いや、そんなのは関係ないのか。
「じゃあ、どうやったらアンタを殺れる?」
『ヤる? それはもう何時でもオーケーだよ或瀬くん! ベッドの上で虐めたげるっ』
「そっちじゃねぇ! どうやったらアンタを殺せるかって訊いてんだ」
『つまんねー』
「何がだ。で? 何処かに行けばアンタがいるのか?」
真剣に訊く。
確かに、上須永莉乃の告白の件でこのドSな神様に苛ついているが、その他にも、俺にはコイツを殺さねばならない理由があった。
今すぐに元の世界に還して欲しいと思うが、コイツを殺せるなら良い機会かもしれない。還るのだって、コイツを殺したら還れる。俺は、まぁ色々あってそれを知っている。
『まぁ、そだね。私はこの世界にいるよ』
「何の答えにもなってないんだが?」
『私の所在は自分で調べなさい。アドバイスすると、まずは大きな街に出た方が良いかもねー』
「アドバイス? 何だ、お前も少しくらいは優し……」
『ここから一番近い街まで百キロくらいあるけどね』
「死ねドS」
『死なないわ。或瀬が目醒めるまでは』
いきなり放たれた言葉に俺は口を噤んだ。
神様は死なないけどね、と付け加えて、ドSな神様の映像は消えた。
「……何なんだ」
或瀬。
あのサド神に呼び捨てで呼ばれたのは随分と久し振りだった。
読んで頂きありがとうございました!
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