決意
結構、長くなってしまいました
森編終了までこれをあわせて後、二話!
駄文ですが、見ていってください
いろいろ小説読んで、表現の仕方を学びたいとつくづく思った話ですね
フェンから力を貰って一週間が流れようとしていた。
あの後、直ぐに旅に出るのかと思いきやそうではないらしい。
ある程度は”天狼族の力”に慣れて欲しいということで、この白銀の森で生活する羽目になった。
この森で、生活していて改めてこの森が豊かなのだと思い知らされた。
日光を反射してきらきらと光る湖に、その中をゆらゆらと優雅に泳ぐ魚達。
森全体は明るい新緑の色で彩られ、風が木の葉を揺らすと木漏れ日が心地よい光をくれた。
そして、草食の魔物は草を食べ、肉食のの魔物は草食の魔物を食べる。
それの食べ残しを鳥系の魔物が食べ漁り糞を出すと、草へと帰る。
完璧な食物連鎖だった。
まだ他の種族に、荒らされたことがないのが、ありありと分かる
こんな所で生活できたことを、俺は一生の誇りに思うだろう。
そして、アルセはここで生活する間にある条件を出した。
それは”グルズを倒すこと”だ。
”グルズ”とは何か?
そう思うだろうか。
そうだなぁ、元の世界で言う熊を思い浮かべてくれたほうが、想像しやすいだろうか。
といっても、熊とは比較にできない。
全身が黒の毛皮で覆われており、四肢も丸太のように太い。
そしてやっかいなのは、その巨体と爪。
”グルズ”は体長が3mもあり、俺の身長を軽く越す。
やつが立つと、二人分くらいの日陰が出来るほどだ。
そして爪。
”グルズ”の爪は、この世界で強く生きていくために、鋭くとがっており、触れたものをいとも簡単に切断する。
想像してみて欲しい。
”グルズ”が俺の目の前で、獲物を真っ二つにした様を。
戦慄したよ。
そして、アルセはその”グルズを3体を倒すこと”をノルマとした。
少しでも、天狼族の力に慣れて欲しいらしい。
そして、一日目は初めてと言うことで、いろいろなことを教えてもらった。
まずは筋力。
ためしに、俺の倍はあるかという巨大な岩を持ってみてと言われたので持ってみると、簡単に持ち上がった。
まぁ、その後に片手でも十分に持てた自分に、戦慄したが……。
そして、聴力・脚力などいろいろなものを試してみた。
全てが人間を超えていた。
遠く離れた音を聞き分ける耳。
夜中でも昼間のように明るく見える目。
アルセと並んで、走られるような足。
一つ一つ確かめていく内に、俺は人間をやめたんだと少し寂しく思った。
そして、”グルズ”狩りが始まった。
~一日目~
「いい?司狼、まずは……あたって砕けろ!だよ?」
「まてよ、おい」
俺達の間には、敬語はなくなっていた。
話してみると、明るい子で知らずの内に打ち解けていた。
いろいろ確認した後に、
「付いてきて」
と言われて、すたこらさっさ歩くアルセに付いて行くと、目の前には話題のグルズが居た。
今は、こっちが草むらに隠れているおかげで、まだ気づかれてはいない。
そしてこの台詞である。
「無理無理無理っ!!なにあのでかい毛むくじゃらっ!俺よりでかいでしょ!?」
「も~、わがまま言う子には……えいっ!」
小さい掛け声と一緒に、俺を小さな手が押した。
「てめっ」
がさっと一人、草陰から飛び出す。
「あははっ……」
すでにグルズはこちらに狙いを定めていた。
「グルォォォォオオオオアア!!」
ビリビリと肌が打ち付けられるような、咆哮。
「うあぁああああ!」
一日目は、自慢の足で逃走した。
アルセが、肩を竦めてやれやれというポーズをしていたのを、視界の隅で捕らえていたが、そんなことは気にしてられない。
自分の命一番!
~二日目~
二日目も、草陰に隠れグルズの様子を伺う。
「今日は大丈夫?」
アルセが心配そうに、こちらの顔を覗いてきた。
このアルセ、俺が逃げていたグルズを一発で仕留めた。
この小さな体の何処にそんな力が……。
「まぁ、さすがに昨日みたいなことはしないから落ち着いたら出て行ってみて?」
「昨日は少しふざけてたんだな?」
「あはは……」
「俺の目を見ろ、目を……」
だがいつまでも、こうしてるわけにはいかない。
落ち着け……。
深呼吸だ。
吸って、吐いてを繰り返す。
……よし落ち着いた。
正直まだ怖い。
吼えられただけで、俺は逃げ出したのだ。
正面に立てるか……。
考えててもしょうがない!
今度は自分の意思で、草陰から出る。
すると、直ぐにグルズは俺の気配に気づく。
そして、息を大きく吸い……
「ごあぁあああああ!」
体が痛い。
鳥肌が止まらない。
だけど、そこから逃げない。
逃げ出さない。
情けないまねは……しない!!
グルズの咆哮が止まる。
ふぅ、額から流れた汗を拭う。
ここからが本番だ。
グルズは既に臨戦態勢になっている。
俺もいつ襲ってきてもいいように身構える。
「ゴルァ!」
来た!
真っ直ぐにこっちに向かい、その逞しい腕を横に一線する。
それを反射で、しゃがんで避ける。
髪の毛の先が、風に乗って飛んでいったが気にしない。
少しでも油断するとアウトだ。
そして、また横なぎに一線。
今度はよく見て、避ける。
(こっちの番だ!)
俺は避けた勢いで、一気に懐に飛び込む。
「グルゥ?」
予想外の動きだったのだろう。
一瞬、動きが停止した。
俺はその隙を見逃さない。
すかさず懐に飛び込み、打ち上げるように拳を突き出す。
グシャァ、といやな音がした。
おそらく、中の内臓やらがつぶれたのだろう。
グルズは口からよだれを大量に垂らし、それは糸を引いて地面へと垂れる。
やがて、ビクンっビクンっと痙攣し始め、やがて息絶えた……。
まさか、一撃で倒せるとは思っていなかった。
打ち込んだ後は一旦引いて、ヒット&ウェイを繰り返そうとした。
だけど、一発。
それほどまでに、人間離れした力。
そして……俺は殺してしまった。
そんなつもりはなかったのにだ。
俺は、両親を殺した犯人と同じことをしてしまった。
もしかしたら、こいつにも家族が居たかもしれない。
そうしたら、残された親兄弟は?
殴った右腕の感触が、俺の罪の意識を再認識させる。
俺と同じだ……。
魔物も、俺も。
すると、アルセが近づいてきた。
「お疲れさまっ」
ひまわりが咲いたような笑顔を見せる。
だけど、俺の様子がおかしいことに気がついたのか、心配そうな顔つきで俺の顔を覗いてきた。
「どうしたの?」
「いや……その……なんだ」
「言いにくいこと?」
「そうでもないんだが……」
「無理して言わなくていいよ?」
アルセの気遣いがうれしい。
だから、俺はある決意をする。
「ありがとう……アルセ。俺、決めたよ……。アルセが出したノルマの後ニ匹、俺は殺さない」
「それは……なんで?」
「俺……思ったんだよ、こいつら魔物にも家族がいるんだろうなってさ。俺と魔物とかってさして、違いはないんだって。そう思ったら、こいつらと俺が重なった……家族を誰かに殺されてやり場のない怒りが、自分を包み込んでいくんだ……。俺は、誰にもそういう気持ちになって欲しくない……。だから、俺は必要最低限……殺さない」
アルセはそれを黙って聞いていた。
そして、おもむろに口を開いた。
「甘いね、すごい甘いよ?」
「うん」
「私が殺してって言っても殺さないんでしょう?」
「うん」
俺の気持ちが伝わるように、アルセの目を見て真剣に応える。
「この世界には常識が通じない輩がいっぱいいる。その人たちに襲われたらどうするの?」
「説得するよ」
少々、迷った後、
「ん~、甘い……けど……いいんじゃない?私は好きだよ?そういう考えかた……」
認めてくれた!
それだけでもうれしい。
俺は喜びを伝えるべく、アルセを抱きしめる。
強く。
強く。
俺の気持ちが伝わるように。
「ありがとう、アルセっ!!」
真っ赤な顔を隠すように、俺の胸元に顔を押し付けてくるのは、ご愛嬌というかなんというか……。
そして、俺は残りの二匹を殺さずに生かした。
グルズの骨や内臓を砕く真似はせず、ちまちまと攻撃を繰り返した。
そうすることで、相手の生活に支障を来たすこともなく、終わったあとにはアルセに頼んで、痛み止めの薬草を置いておいて貰った。
俺は、ここでじいさんの言葉を改めて、強く刻み付ける。
”縛り”という鎖で深く、深く心に打ちつけた。
『困っている人がいたら、助けろ』
人間だけでなく、なんでも、俺の手の届く範囲で助けると。
そして、俺達はいよいよ世界へとたびだとうとしていた。
ここまで、よんでくださった方々……
ホントにありがとうございます!!
感謝感激です^^
アクセス解析を見ていて、こんな小説をみてくださる方々がいてもらえるだけで幸せです
ありがとうございます
これからもよろしくお願いします
例のごとく、感想や誤字脱字など気軽に吐き捨ててってください
待ってます!