擬態するモノ
今回は少々バトルを入れて見ました。
わかりにくいとは思いますが・・・よろしくおねがいします。
~アルセ視点~
突然ミノタウルスの体がでこぼこと波を打ち始めた。
気持ち悪いよっ。
正直触りたくも無いよっ!
だけど、異変はそれだけでは終わらなかった。
ミノタウルスの体から触手が現れた。
そしてそれは私達を目で捕らえる。
いやあれは私達じゃない。
私は司狼の方を見る。
驚いてはいるようだけど、焦りが全く見えない。
ダメ!
そうやって相手を甘く見ちゃ!!
ボコボコっ
奇妙な音を立てて触手は私達、いや……司狼めがけて直進してくる。
このままじゃ当たるっ!!
「切り裂けっ”風の刃”!」
無風だったこの場所に風が集まり、それは私の魔力を得て、形を得る。
ただの風だったものは集合し、段々と刃を形作っていく。
そしてそれが一定の魔力が溜まると私はそれを触手に向かうように強く望む。
「えいっ」
ヒュォォオオオオ──。
スパンっと何の抵抗も無くいとも容易く、触手を切り裂いた。
切り口からは真っ赤な雫が流れ落ち、痛いのかうねうねとうねりながら主人の下へ帰っていった。
「うおわ!?」
司狼にとって相当、予想外だったのか尻餅をついて座り込んでいた。
「大丈夫?司狼ぅ?」
「あ、あぁごめん……助かった」
「油断しすぎですね」
グラシオさんがミノタウルスから目を離さないまま、司狼に注意した。
「す、すみません……」
流石に応えたのかシュンと肩を落ち込ませる司狼。
だ、大丈夫だよっ司狼!
一度の失敗がなんだっ。
「ん」
私は司狼に手を差し出した。
司狼は一瞬キョトンとしたが、差し出した手を掴んで私は一気に引き上げた。
「ははっ。立場が逆だな。ホントは俺が手を貸すべきなのに……」
「気にしないで?助け合い助け合い」
「……なさけない」
「司狼……」
「お二方っ!戯れている場合ではありません、来ますぞ!?」
~司狼視点~
クソッ。
情けない!
アルセに助けてもらうなんて。
俺が助ける立場だろう。
何をやっているんだよ、俺。
それにしても……怖かった。
触手が迫って来たとき正直、死んだかと思った。
今、さっきのことを思い出すとブルっと身震いしてしまう。
イヤ、今はそんなことを言っている場合じゃない。
恐怖なんて振り払え。
目の前に集中しろ……。
「お二方っ!戯れている場合ではありません、来ますぞ!?」
!?
来るっ!!
再び触手が俺たちに襲い来る。
今度は油断しない。
「もう当たらないよっ」
見える。
落ち着いて触手を見れば避けれない速度じゃない。
縦横無人にしなり、襲い来る触手を避けながら着々とミノタウルス?に近寄る。
「司狼っ前!」
眼前に触手の先が!
「うおおおおおお!?」
俺は触手が俺に当たる直前よりも早く、グラムに手を伸ばし触手をなんなく切り裂く。
「アルセ!ありがとう!」
「どういたしましてっ」
「それにしてもこれ、本当によく切れるな……今そんなに力込めていなかっぞ?」
俺はグラムをまじまじと見た。
まぁいいか。
よく切れて悪いことはないだろ。
俺はグラムについて血を振り払った。
びちゃびちゃっと大地に跳ねたが、すぐに吸収されていった。
よし……少し本気だそう。
俺は脚に力を込め始める。
ググッグググ──。
地面が耐え切れなくなったのか足が後ろに擦れて行くたびに線を引く。
まだだ。
次の触手が向かってくるときに……。
するとミノタウルスの体がまたぐにゃぐにゃと動き、触手がこちらへ向かって来る。
今だ!
俺はその触手すれすれを避け、一気に懐に潜り込む。
「グラムで切ると死んじまいそうだからな。拳で我慢してやる……。とりあえず、気絶しとけ!!」
俺は渾身の力を込めてアッパー気味に右手で、ミノタウルスの鳩尾を殴った。
ガィィィイイイイイン!!
拳はよほど強い力が働いたのかふわりと体が浮かび、顔から地面へ落ちていった。
だが……
「……イッテェェェエエ!?」
俺の手は凄まじい痛みに襲われていたっ!
クッソ……。
拳が作れない。
あまりの痛さにその場にうずくまって、動くことができないでいた。
視界も手のあまりの痛さにパチパチと光りが点滅して、上手く見えない。
完全に右手の感覚がなくなっていた。
何故だ?
俺は何を殴った?
あれは……言い方は悪いが『肉』だろ?
俺が叩いたのは完全に金属の感触だったぞ?
音だって金属をトンカチで叩いたような音だった。
なんなんだよこいつ!?
「司狼様!とりあえずそこから離れてくださいっ」
グラシオさん達なら何か知ってるだろ。
俺はその通りによろよろとアルセ達の元に戻った。
「司狼!?その手!」
「あぁ……腫れてるな。開いたり閉じたりすることもできないよ……」
「大丈夫……ではないな」
苦笑いしかできなかった。
「俺の右手は一先ずいい……」
問題は……
「あれはなんなんだ?」
「あれは……おそらく”ミミック”でしょう」
「”ミミック”?」
「えぇ、擬態が得意な魔物です。普段は宝箱か何かに化けていて、欲に眩んだ者を食すという魔物ですが……おそらくミノタウルスも食われたと考えてよいでしょう。しかし……」
「しかし?」
グラシオさんの言葉を遮り、アルセが説明を加えてくれる。
「”ミミック”は本当は洞窟とか薄暗い場所を好むんだよ。こんな何もない人里に下りて来るなんてまずないの。それが、何故ここにいるんだろう?」
グラシオさんが少し考え込んで、
「一つの可能性があるとしたら……司狼様、あなたでしょうね?」
「え?俺ですか?」
「おそらく……。まぁ理由まではわかりませんが……」
「……ソイツ……キケ……ン」
三人がバッと”ミミック”を見る。
見るとノソッと起き上がっている最中だった。
俺が殴った後が拳の形をして残っていた。
効いてないってわけじゃないのか?
「イマ……ノウチに……コロサナイ……ト、タイヘン……」
俺は危険物かよ……。
「サイアク……ソノブキダケデモ、コワス」
グラムを?
「おい!俺の何処が危険だって言うだよ!?お前らに何もしてないだろう?」
少々、身に覚えのないことで危険って言われてイラッとしたから、叫ぶ様にして呼びかけた。
「ワカラ……ナイノ……カ?ジャアクナ……チカラガ、ウズマイテ……イルコトニ?」
「そうか!」
グラシオさんが納得の言った様に頷いた。
「司狼様っ。小屋の話の続きです!そのグラムの意味を……ぬお!?」
「グラシオさん!?」
俺の目の前でグラシオさんが吹っ飛んで言った。
後方でズサーという音が聞こえる。
だが俺は触手とにらめっこしていた。
「ナニカ……オシエ、ル……ワケニモ……イカナイ」
「待てよっ!俺がなんだっていうんだ!」
「シラナクテ……イイ。スグ、コロス……”幻影”」
最後だけやけにはっきりとした発音だった。
するとこの村一体を包むように濃い霧が視界を遮り始めた。
「クソッ」
俺はまだ”ミミック”が見える位置に走る。
今度は容赦しない。
俺はグラムを左手に持ち変える。
”ミミック”が何かしてくる様子はない。
油断しているな!?
完全に捕らえた!
「死なない程度に切るっ!」
スパンッ──。
と刻み良い音と共に”ミミック”を切り裂いた。
だが……今度は感触がない。
さっきの金属感でもない、まさに空を切るといった感じだ。
俺は何も切っていない。
イヤ、確かに切ったはずだ!
「モウ……オソ……イ」
まさか!
呪詛かっ!
「アルセ!?」
「司狼っ気を付けて。これは相手に幻を見せて惑わす呪詛だよ……。いい?自分をしっかりもって」
「アルセは?」
「この霧を何とか消し飛ばしてみる。それまで私は行動できないから、ごめんね……」
「イや、十分だ。なるべく急いでくれ。それまで俺が時間を稼ぐ!」
「うん……気を付けて」
「司狼様っ」
「グラシオさん!?」
「グラムは──」
グラシオさんの姿も声も音も全て掻き消された。
グラシオさんだけじゃない、アルセも町の人も全て消えた。
俺は完全にこの霧の中で一人きりだった。
なんなんだよっ!
グラムって。
なんか意味があるのか?
俺がそんなこと考えても意味が無い。
わかるわけがないんだから。
このことは一旦忘れよう。
今はこの状況をどうするかが、先だ。
「司狼?」
「!?」
ドクンッ──。
霧の中。
霞がかかった中ではっきりと懐かしい声が聞こえた……。
こんばんわ^^
ふちかですm(_ _ )m
いつも見てくださっている方々、初めて見てくださっている方々、いつもありがとうございます
さて今回の話ですが、慣れないながらもバトルを入れて見ました。
いやぁ、難しいですね(汗
自分の妄想?ではしっかりと動いてくれているんですが、いざ文字にしようとするとごっちゃごちゃになりますね(^_^;)
そんなわけですから、この場所もっとこういう表現にした方がいいんじゃないか?という意見を遠慮なく言ってください。
スグに直していきたいと思います。
さぁ物語も佳境ですね。
グラムのことちょっとひっぱりすぎでかね?(笑
グラシオさん不遇^^
次の話くらいでわかると思います
何時くらいで”ライカン・スロープ”だせるかなぁ・・・
自分でも楽しみです♪
~~~~
次の更新ですが・・・
未定です(゜д゜;)