我が身を犠牲に・・・
初めての作品なので、さぐりさぐりやっていこうと思います
つまらんなどの意見も自分を成長させる意見としてとりいれますので、どこが悪いのかなど細かい指摘もしてくださるとうれしいです
誤字・脱字などもあれば訂正しますので、よろしくおねがいします
「ん?ここは?」
光に包まれて、目を開けてみると、ビルほどあるんじゃないかという大木に囲まれているのかがわかった。
こんなでかい木、俺の家の森にもねぇぞ・・・。
その大きさに若干気圧された。
だが、反対に木々を掻い潜ってきた風は心地よく頬をなでる。
まるで、落ち着け。
とでも、言うように・・・。
「うん、いい所だ」
思わずつぶやいた。
あまりの心地よさに、光に包まれたとか、ここが何処だとかどうでも良くなった。
まるで、自分と1対となってくれているようだ。
「小僧・・・。ずいぶんと落ち着いているようだな・・・」
唐突に聞こえた声。
光に包まれる前に聞こえた、弱弱しくも、強く、威厳のある声。
「後ろだ、小僧・・・」
自分に影が出来たのがわかる。
気配を感じなかったぞ・・・。
少々怖いが、声の通りに後ろを振り向く。
「後・・・ろ?!」
そういわれて、振り向いた先には・・・。
「呼びかけに、応えてくれたことをまずは・・・、感謝・・・するぞ、小僧・・・」
白銀の毛皮に血を滲ませた、強く気高い狼がそこにいた。
ははっ・・・。
さすがにちょっと、ちびったわ。
イタズラ成功みたいに、口角を吊り上げて、ニヤッとした狼に少し腹が立った。
「それで?あんたが俺をココに連れてきたのか?」
「うむ、その通りだ。我がキサマをこの世界へと誘った。我が名は、フェンリル。フェンと呼ぶがいい」
「おーけぃ。んで、俺が春原 司狼だ。小僧じゃなくて、司狼と呼んでくれ。よろしく」
最初は驚いたが、落ち着いてみればどうってことはなかった。
俺を喰う気はないらしく、かなりの知性があるらしい。
目の前の狼・・・。
フェンは体長は6mくらいだろうか。かなりでかい。
もののけ姫の山犬よりも少しでかいと言ったほうが、伝わりやすいだろうか・・・。
つやつやとした毛は、狼特有、ごわごわしていると思いきや、触れてみるとかなりやわらかい。
自分に意見を許さないという様にこちらを睨むするどい剣幕。
王者にふさわしいほどに堂々とした威厳・・・。
・・・正直に言うわ。
かなり怖い。
正面に立つのでさえ躊躇するほどに・・・。
まぁ、いま真正面にいるんですけど。
だけど、気になる点が一つ。
・・・ところどころ、あふれ出している血だ。
一番酷いのは、腹の部分。
周りの毛が焼け焦げており、穴が開いているような傷だ。
フェンも相当やせ我慢をしているのだろう。
普通にしゃべっているように思うが、眉間にはしわが寄り、表情も険しい。
息も荒い・・・。
その視線に気づいたのか。
「我の傷のことは気にするな。もうどうにもならん。死期が近いのもわかっている。だが、心残りがいくつかあるのだ。だから、異世界の住人であるキサマを呼んだ」
「と、いうと?」
「我の呼びかけに応えたということは、いかなる要求も呑むということだな?」
「まぁ、そうなるが・・・。なんだ、傷を治せとかか?」
「いや、さっきから言っているように、もうどうにもならん。正直に言うと、さっきから意識も、朦朧としておる。キサマに頼むのはもっと、別のこと・・・」
そういって、1拍おいて、
「キサマには我の力を受け取って欲しい」
「いいよ~」
「即答だと?!ゴハッゴハッ!!」
俺の即答が予想外だったのだろう。
弱っているのに、激しいツッコミをして血を吐いていた。
「いや、大丈夫か?」
「ゴホッ、ゴホッ・・・キサマ・・・。得体の知らない力だぞ?少しは迷ったりせんのか?」
「全然。お前が助けろっていうなら、なんであれ。俺は無条件でお前を助けるよ?それが、俺の想像を超えるものであっても・・・」
正直な話。
怖いっていえばうそになる。
だけど、フェンが死ぬ気でものを頼もうとしているんだ。
それを断るなんざ、死んだ時にじいちゃんに殴られちまう。
一瞬、キョトッとした顔をした。
初めての間抜け顔だ。
爆笑してやろうかと思ったが、殺されそうなのでやめとく。
だが、すぐにもとの顔に戻って、
「そうか・・・。お前を選んだのは正解だったようだな。屑みたいなやつだったらこの場で八つ裂きにしていたところだが・・・」
怖いこといいやがる・・・。
空気が突然、ピリッとしたものになった。
鳥肌が止まらない。
さっきまで、心地よかった風がやみ、さわさわと音を立てていた木々の音もやんだ。
完全な静寂の世界。
もちろん、そんな世界を作り出しているのが、目の前のフェン。
さっきまでの雰囲気を完全に消し去り、へたっていた毛も逆立っている。
「小僧・・・。我も限界が近い。手短に話すぞ。キサマに受け継がれるのは、我の力・・・。力といっても純粋な筋力だが・・・。それと、センス・・・。この二つが人を凌駕する。本当は魔力も渡してやりたいが、あいにく、我の魔力が高すぎる故、人のみであるキサマの器がもたん。それと、キサマの体にも変化が起こる。我を引き継ぐことによって、人よりも我ら『天狼族』・・・我らに近い存在になる。といったところだ。何か、質問はあるか?」
「俺、この世界についてなんにもしらねぇんだけど・・・」
おい、そこの狼。
しまったみたいな顔すんな。
「すまんが、そういうことは、娘に聞いてくれ。これが終わるまで、周りで見張りをさせている。終わればいろいろなことを教えてくれるだろう。心残りとは、娘のこともある・・・頼んだぞ」
「了解、俺からはもうねぇよ」
「そうか、では・・・いくぞっ!!」
フェンが、空に向かって遠吠えをする。
すると、空から魔方陣のようなサークルが現れ、俺とフェンを囲った。
空気が張り詰める。
『我、天狼王の名においてー』
ーなんだろう、圧倒的な存在感を放っていたフェンの空気が薄くなっている。
『若き勇者の力にならんー』
フェンが、呪詛を唱えていくにつれて、俺の頭の奥がピリッと痺れる感覚がよぎる。
『我の命を糧としてー』
痺れる感覚が、だんだんと痛みへと変換されていく。
「グッ・・・!あぁっ?!」
あまりの痛さに、頭を抱える。
だが、痛みが和らぐことはない。
「ぐぅぅううっ?!」
その様子を、フェンは血が滲むほどに歯を食いしばり眺める。
ーすまんな、小僧。これで、最後だ・・・。
『我は勇者の血となり、肉となるっ!!』
「ぁぁぁああああああっっっ!!」
痛みが頂点を越えた。
フェンが、呪詛を言い終わった途端、頭が焼ききれるんじゃないかという痛みが襲う。
「頼んだぞ・・・司狼・・・」
意識を手放す前、フェンのそんな声を聞いた気がした。
ペロッ、ペロッ
ざらざらした生暖かいものが顔をなめている感触がする。
「ぅん・・・、ん?」
目を開けてみると、フェンが俺の顔をなめていた。
・・・いや、フェンにしては小さい。
比べ物にならないほどに小さい。
1m60・・・ほどだろうか。
俺よりも、小さい狼がそこにいた。
目の前の狼の頭に手を載せて、うりゃうりゃと撫でてやると、うれしそうに顔を摺り寄せてきた。
「かわいいなぁ・・・」
おもわずつぶやいてしまった。
だが、褒め言葉だとわかったのか。
「くぅ~ん」
とさらに甘えるように擦り寄ってきた。
ずっと、こうしているのも良かったが、フェンのことが気になる。
痛む頭を叩き起こして、キョロキョロとフェンの姿を探す。
いた・・・。
見つけた・・・。
「フェン・・・」
よろよろ立ち上がる俺を心配してか、狼が支えになって歩かせてくれる。
どうにか、フェンの近くまで歩いていく。
そして、フェンを見上げて立ち止まる。
「あんた・・・かっこよすぎるだろ・・・っ!!」
知らず知らずに声は熱を帯び、目頭に熱いものがこみ上げてくる。
俺の視線の先には、死して尚も王者の貫禄を見せつけ、決して倒れるのよしとしない王の姿がそこにいた。
ー本気で尊敬するよ、フェン
俺はこの世界で始めて泣いた・・・。
すみません
ながながと書いてしまいましたw
フェンと司狼の出会いでした。
どうでしたか?
まだ、冒険にでていませんが、感想などがあったら遠慮なくしていってください
誤字・脱字はすぐに修正します
では、これからもよろしくおねがいします