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俺のきもち(翔平のつぶやき)

 ベットから天井を眺めているのにも、もうあきた。俺は、いつまでこうしていないといけない?


 翔平は、両手を頭の後ろで組んで天井を睨んでいた。はあっと深く息を吐いて、壁の時計を見た。


 1時か・・・


 警察が踏み込んできたのは確か10時過ぎだったから、あれから3時間くらいしか経っていないんだな。なんだか1年くらい経った気がする。


「1時か・・・」


 翔平はもう一度時計を見て、低く呟いた。


 学校では、もうセレモニーが終わってバーベキューが始まっている頃だな・・・。こんなことになるなら、さっさと激励会に行けばよかった。


 目を閉じてゴロッと寝返りをうつと、かさっと手に触れるものがあった。


 手紙だ・・・


 翔平は、ベッドの上で半身を起こすと手紙を手に取った。


 この手紙・・・いつものように、沙南がくれた、ちょ~迷惑な手紙。沙南がおせっかいなことしなければ、俺はこんな事件に巻き込まれずにすんだんだ。もう二度と手紙なんか受け取らない。たとえ沙南に頼まれたって、絶対にだ。


 思い余って手紙を破ろうとした。破って事件まで粉砕したいと思った。だが、翔平は、それを思いとどまった。


 そういえば・・・手紙の内容は、今回の事件と関係無いって兄貴が言ってたっけ。

それから、この手紙読んだほうがいいとも言ってたよな。


 翔平は、史輝のことばを思い出して、手紙を開けてみた。


 翔平の目に、ころっとしたかわいい字が飛び込んできた。


 っ!


 これ、沙南の字だ。アイツの字はすぐわかる。小学校の時から、もっときちんと丁寧に書けよって俺が注意しても、丸っこくって、小っちゃくって、いかにも女の子が書きましたって字を書いていた。


 てか、この手紙、沙南が書いたものなのか?


 がばっと起き上がると、俺は、逸る気持ちを抑えながら手紙を読んだ。





あなたが好きです

なんども、なんども、書いては消した

たった一言なのに

言えない・・・

書けない・・・

伝えられない・・・


あなたが好きです

あなたがだれかに言ったら

わたしはきっと・・・

ううん

だれにも言わせない

だれにも

あなたの笑顔

見せたくない


あなたが好きです

わたしのすべてで

伝えたい

あなたにだけに

伝えたい


あなたが好きです






 これを・・・沙南が、俺に?


 翔平は、手紙の内容がまだ信じられなかった。


 俺にこの手紙を渡した日、沙南はしつこかった。いつもなら、俺が、「またかよ?うぜぇ!!」って言ったら、「だよね?わかった。これ、本人に戻しとく。」って言うくせに、あの時は、引きさがらなかった。


「おねがいっ!!もう、こんなことしないから!今回だけは、受け取って!!!」

って、必死に頼み込んでいた。


 それって、自分の手紙だったから?


 沙南が、俺を好き・・・だって?


 まじかよ。


 翔平は、湧き上がってくる嬉しさを抑えられなかった。


 やべっ、ちょ~嬉しい!!今までこんな気持ちになったこと、ない。


 告られたことは何度もある。でも、うざいだけだった。返事をしなきゃいけないって思うと、むかついた。今まで告ったヤツの顔なんか、誰一人としても覚えていない。

俺にとっては、みんな“へのへのもへじ”。


 だけど、今回はちがう。


 沙南が一生懸命に手紙を書いている姿、目に浮かぶ。ちょっと、前かがみになって、シャーペンでおでこをコツコツって小突きながら手紙を書いている沙南が。


 何度も消した跡、コピーでも確かに手紙に残っている。アイツ、どんだけ悩みながらこの手紙を書いたんだろ。


 沙南が自分の気持ちを伝えようと書いたこの手紙の相手は、俺なんだ。


 沙南は、俺を好きなんだ。


 俺も!


 俺も?


 翔平は、自分の心に問いかけた。ずっと前からモヤモヤした気持ち、沙南が絡むとなぜかすっきりしない俺の心・・・。


 俺は、俺は・・・沙南が好きなんだ!


 だから、沙南のことになると落ち着かなくなる。アイツが絡むと自分の感情をコントロールできなくなるんだ。


 やっと、わかった!


 俺は、沙南が好きなんだ。


 沙南も・・・俺を好きなんだ。


 自分が軟禁されていることはすっかり忘れて、翔平は、ちょっとの間、満たされた気分だった。


 俺、沙南と両想いなんだよな?


翔平は、嬉しさのあまり沙南が渡した手紙は自分が書いたものじゃないといったこと、すっかり忘れています。恋心故なので、許してやってください。

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