1話目 笑い
この生きづらいの中、笑いと時代がどう重なり合って、どう時代を破壊してより面白い世の中になるか。笑いに人生を売った青年達の物語。
俺はお笑い芸人だ。
笑いに魅了され、笑いに救われ、笑いがあるから生きていけている。
学生時代は決して前に出ていくタイプではなかったが、今の相方である雛形がバカをやって、それにツッコんでいたらいつの間にかクラスの輪のに入れた。
もし、これがなかったら俺は学校生活を孤独に過ごしていただろう。
笑いに人生を捧げる事にした。
正直、勉強もできなかったし、就職なんてしたくもなかった。
バカやって金貰えるそんな大人になりたかった。
勿論、親や教師には反対された。それでもこれで飯を食うって決めたんだ。
雛形を誘ったのは1番掛け合いをしやすかったからな。相変わらずバカだから誘った時、迷いもせず、いいよ。と言った。
「おい、若山。そろそろ出番だぞ。」
相方の雛形が声をかけてきた。今日は劇場出番だ。
俺達が所属しているのは会社が運営している若手の劇場だ。
舞台袖に行きながら軽くネタ合わせをする。
前の出番が終わって、俺達の出囃子が鳴る。
「どーも!雛形と若山でストレートと言います。よろしくお願いします!」
拍手が鳴り止み、ネタに入る。今日は若い客が多いからそれに合わせたネタをやる。
「いやあ、学校行事で1番盛り上がるものといえば、文化祭ですよね。」
「いやいや、健康診断でしょ。」
「何言ってんだよ!あんなのただのライン作業だろ!」
基本的に俺達の漫才はしゃべくりだ。2人で喋り倒して喧嘩のように言い合うのがモットーだ。
「もういいよ!どうもありがとうございました!」
ネタが終わり、舞台から捌ける。
袖には次の出番の先輩芸人がいた。
「兄貴!お勤めご苦労様です!」
「誰が出所後だ!全くちゃんとネタ見てろよな。」
「はい!勉強させていただきます!」
この兄貴は3年先輩の大和さんだ。1年目の頃から食えない俺をよく飯に連れてってくれたかけがえのない兄貴のような大先輩だ。
普段はチンピラのような風貌だが、漢気溢れるかっこいい先輩だ。
「ブス、デブ、ハゲ!なんで言っちゃいけねえんだ!」
「コンプライアンスが厳しい時代だからだよ。」
「じゃあコンプラ作ったやつ呼んでこい!酒作ってやるから。」
「もてなすのかよ。もういいよ。」
大和さんのネタ終わりの姿はカッコ良すぎる。時代に逆行したネタで中々テレビで花は咲かないが、それでも自分を貫き通してる。
「大和さん、お疲れ様です!今日も最高でした!」
「おお、そうだろ!お前らのネタも最高だったぞ!」
「ありがとうございます!」
そう言って立ち去った。
楽屋に戻ると今年一番の大会、漫才チャンピオンの話で持ちきりだ。
「いやあ、何回もやってるこのネタ、調節できてやっと面白くなりそうだわ。」
なんだよそれ。劇場に来る客笑わせるのが芸人だろ。金取ってるわけだし。
俺たちストレートは、劇場ネタと賞レースネタを使い分けている。ゆえに今回の文化祭のネタは使わない。
「なあ、若山。賞レースのネタはどうなってんだ?」
「ちゃんと作ってあるよ。そろそろネタ合わせの日を決めよう。」
そんな時、先輩が声をかけてきた。
「若山はあの文化祭のネタで勝負かけるのか?」
「いや、あれは劇場用のネタなんでそういうわけじゃないです……」
「ふーん。お前ら劇場で調節しないで度胸すごいよな。よっぽど自信あるんだな。」
「劇場ネタに自信はありますよ。折角劇場まで足運んでくれてる方々に失礼でしょ。自信あるネタでやらなきゃどうするんですか?」
「ううっ……」
「大体、調節したくらいで何か変わるんですか?そんなんで対策取れるならとっくに優勝してますよね?」
「お前、先輩だぞ!」
「先輩も後輩も関係ないでしょ。どんな形であれより面白い方が上ですよ。」
「おーおー、どうしたどうした?」
大和さんが現れた。
「全く、どうせ若山が生意気な態度取ったんだろ?先輩なんだからちゃんと謝れ。」
「うっ……すみませんでした。」
「ったく、若山にはきつく言っとくから。金岡も俺の顔に免じて許してくれ。」
「わ、わかりました。」
「ってなわけでストレートはこれから飯で説教会だ。」
「ええ!?俺もですか!?」
「相方なんだから雛形も同罪だ。さあいくぞ。」
「はーーーい……」
俺達は大和さんに連れて行かれ、劇場を後にした。




