第7話: ヒロシの家に到着したら…説得力のために一緒に寝ようと言われました
第7話では、いよいよヒロシの家へ…!
まさかの高層アパート&夜景に、さゆりのドキドキはMAXです。
そして、あの一言――「同じ部屋で寝る」!?
冗談なのか本気なのか、ヒロシの真意は…?
今回は、二人の距離が少しだけ縮まるお話です。
第7話: ヒロシの家に到着したら…説得力のために一緒に寝ようと言われました
彼のアパートに着く。
新宿の高層アパート、カードキーのエレベーター、そして最上階。
緊張で心臓がうるさい。
重厚な木のドアを開けてもらい、一歩中へ入ると――
床から天井までの窓の外に、宝石みたいな夜景が広がっていた。
モダンで暖かくて、ふわっと漂う家庭的な香り。
(えっ…ここに住んでるの!?お金持ち…!?)
私の暮らしとの落差がすごくて、余計にドキドキした。
(俊郎おじさんの友達の家…彼の好みに合うのかな…?)
「…ぼさっと突っ立ってんなよ」
ヒロシは頬を赤くしながら、私のバッグを床に置いた。
「…好きにくつろげ」
「ありがとう、ヒロシ…」
ぎこちなく笑うと、彼は視線を逸らしながら部屋を指さした。
そして、ふと疑問が浮かんだ。
「…あれ?寝室ってひとつしかないけど…ヒロシの部屋は?」
ヒロシは口の端を上げてニヤリと笑う。
「決まってんだろ。同じ部屋で寝る。そっちのほうが話にリアリティが出る」
「なっ…なに言ってんのっ!?!?」
顔が一気に熱くなる。
「べ、別に誰も見てないんだから、そんな必要ないでしょ!?」
ヒロシは視線を逸らし、頬を染めたまま笑った。
「冗談だよ。リビングで寝るっての」
「…もぉ、びっくりさせないでよ…」
心臓のドキドキを必死にごまかす。
(この人…たまに変なとこで本気なのか冗談なのかわかんない…)
「まあ、安心しろよ。ここなら快適だ」
(今ので全然安心できなかったけど…)
心の中で小さく笑った。
リビングに案内され、ソファに座るよう促される。
「座ってろ。…何飲む?」
「お水でいいよ」
彼がキッチンに行っている間、部屋を見回す。
大きな窓、シンプルで上品な家具、本棚、そして額縁の写真。
(読書が好きなんだ…あの写真、なんだろ…)
(警察官の部屋というより、お金もセンスもある人の部屋…こんな人なら彼女なんていくらでもできそう…)
胸が少し苦しくなるけれど、そこへヒロシが戻ってきて、その気持ちはかき消された。
水を持って戻ってきたヒロシが、真剣な声で言う。
「まずはお互いのことをよく知る。それが一番、芝居を本物にする近道だ」
「芝居…ね」
少し笑ってみせると、ヒロシも口の端を上げた。
「…カップルのフリなんだからな」
(…彼のこと、もっと知れば、この変な懐かしさの正体もわかるかも。)
「じゃあ、教えてよ。ヒロシのこと。暇な時は何してるの?」
そこから色々な話をした。
彼の趣味、家族、夢…
警察官としての真剣さ、人を大事にする優しさ。
(…でも、まだ見せない部分がある。心の奥の、大事なところを鍵かけてる感じ…)
テーブルを見つめながら、私は小さく笑った。
(そうだよね。全部を話す必要なんてない。だって、私たちは“ただのフリ”なんだから…)
高層アパートの夜景、そして謎めいたヒロシの生活。
彼のことを知れば知るほど、「フリ」のはずなのに距離が縮まっていく…
次回、二人の関係にちょっとした試練が訪れます。お楽しみに!