教えます!
(石田さんだ… こんな格好で会いたくない、サッと帰ろう)
早歩きで家まで帰ろうとしたら、
「ひゃひ!」
いきなり後ろから腕を掴まれ、ゆっくり後ろを振り向くと、石田さんだった。
「何その驚き方。面白いね刹那さんって」
(すっぴんオフモードで私の事気づくって、やばくない? いやいやいや、顔見せられないって)
俯きながら、
「お久しぶりです」
と私はボソッと呟いた。
「お久しぶりって、昨日会った所だよね。そんなに僕と会わない時間が長く感じたの?」
(くーー、こう言う所だよ。これだから、素直に前に進めないんだっつーの)
「間違えました。お疲れ様です。何で私を引き留めたんですか?」
萌え袖しているパーカーで少し口を隠しながら聞く私。腕を掴まれているのは継続中だ。
「あぁ、ぽいなーと思って。昨日連絡しようと思ったんだけど、あの帰りに携帯壊しちゃって、連絡取れなかったんだ」
それを聞いてホッとする私。
(って、ホッ じゃねぇよ!! あんな終わり方で何期待してるの)
心の中で忙しくしていると、
「ねぇ、連絡先聞いてもいい?」
と、言われ、鼓動がどんどん早くなり、掴まれている腕にも伝わりそうだ。
「べ、別に良いですけど、いりますか? 私の連絡先なんか」
「あー、嫌なら別に良いや。じゃ、またどこかで会えたらいいね」
と、パッと腕を離され、笑顔でコンビニの中に入ろうとする石田さん。私はこの一瞬で色々考えた。この人と連絡先を交換して、また会う事があったら、どんな顔をすれば良いのか、取扱説明書を受け入れてくれない人と関係を続けるのはどうなのか、わーっと考えた結果、
「教えます! 連絡先教えるので、ちょっとこっちまで来てくださ…い」
結局勢いで引き止めてしまった。最後の方では、言った事を後悔しながら…
コンビニに入ろうとしていた足が、私の方向を向き、スタスタ歩いてくる石田さん。
「意外と素直なんだね、刹那さん」
と、私が引き止める事を知っていたかのようだ。
「うるさいです。断ったら後味悪いかなと思っただけです」
すると、
「じゃあ、やめとこうか…」
「いや、待って…」
と、またコンビニに向かおうとする石田さんに、ぎゅっと服の袖を掴み引き止める私。
「可愛いね」
(か、か、か可愛い!? すっぴんにオフモードで、素直になりきれない私を?)
石田さんといると心臓がもたない。連絡先を交換して、私はすぐに家に戻った。
プシュッ…
「ん、ん、ん。 ぷはー! やっと飲めた。今日は何だか色々あったなぁ… 私からアプリ通して連絡するつもりだったけど、あんな形で連絡を取るきっかけが出来るなんて…」
ローソファにもたれかかりながら、交換した石田さんの連絡先を見つめる。
ブブッ…
いきなりの通知で石田さんからじゃ無いかと思い、びっくりする私。開くと、希ちゃんだった。
『手、あれから大丈夫〜? あまり無理しないでね。
それから、あの、石田さん?って人に連絡できたのー?』
心配して連絡くれたんだ。家庭があるのに、私の事気にかけてくれて、本当に優しい人だな。
『大丈夫だよ。今言われるまで忘れてたぐらい。笑 それがですね、色々ありまして、また明日お話しさせて頂きます。』
『え、気になるー! まだ月曜日で、仕事めんどくさマインドだったけど、明日も頑張れるわー、』
ニヤニヤしながらスマホを眺める私。希ちゃん、最後『、』ってなる感じ、やっぱり忙しい時に連絡くれたんだな。
「私も。 また明日おやすみっと」
言葉に出しながら連絡を返し、スマホを机に置く。
ブブッ。
カルタを取るように、瞬時にスマホを開いた。
「そりゃあ、希ちゃんだよね」
希ちゃんからのおやすみの言葉とスタンプの連絡だったが、石田さんからの連絡を待ってしまう私が居た。しばらくチラチラスマホを確認しながらお酒を飲んでいたが、朝になっても連絡は来なかった。
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