表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
風・芒  作者: REI-17
40/174

第040章 第二層の地宮

第040章 第二層の地宮

*

一階の正庁の花架の裏に暗門があり、その先には木製の階段が百段以上も続いていた。階段を下りきると、強力な霊力の結界が現れ、軽く触れると水面のように波紋が広がった。侍女が霊符を掲げて結界に触れると、狭い隙間が開き、皆が横に滑り込むようにして入った。そこは幽深で広大な地下宮殿だった。

地宮は数丈の深さにあり、八面の壁は銅板で装飾されていた。長い年月のせいか、銅板には層状の緑青が浮かび、元々刻まれていた文字はぼやけて読み取れなくなっていた。地面は黒い石板で舗装され、八方から放射状に中央に集まり、巨大な玉の台座を囲んでいた。台座の周囲は玄鉄製の花枝模様で飾られ、小鹿はその模様が奇妙だと感じ、よく見ると何かの符咒のようだった。

「ここは句芝大人の修行の場です」と、侍女は小鹿の疑問に気づき説明した。「十里香街は静かな場所が少ないので、特別に結界と地宮を設けたのです。」

小鹿は頷いた。地宮は必須ではないが、妖が自分の安全な領域に結界を張るのはごく普通のことだった。

「こちらへどうぞ、お二人の若様」と侍女は言い、大殿を横切り、銅壁の彫刻を数回押すと、暗門がゆっくりと開き、右側の壁に縮こまって廊下が現れた。

小鹿の躊躇を見た凛凛は、そっと耳元で囁いた。「心配しないで、出られるよ。」

小鹿は安心して侍女の後を追った。

彼は先ほどの凛凛が頭を下げた動作を思い出し、少し気分が沈んだ。今の凛凛は実力、年齢、身長のどれをとっても彼を圧倒しており、大きなプレッシャーを感じていた。

とても不安だった。

*

猎猎はまたトランプで負け、むくれていたが、顔を上げると小鹿と凛凛がいつ入ってきたのか、ドアのそばで静かに見ているのに気づいた。彼はカードを投げ捨て、にこにこしながら立ち上がり、大きく手を振って叫んだ。「水妖の大人!」

蘇允墨が振り返り、嬉しそうに手を叩いて言った。「もう帰ってこないかと思ってたよ!」

二人の小姓が牌卓を片付け、会釈して去った。

*

「ここに住んでて、ちょっと息苦しくない?」小鹿は部屋を見回しながら尋ねた。部屋は広くて清潔だったが、窓がないのが彼には居心地悪く感じられた。

「慣れてるよ。姉貴の豎沙城の地宮もこんな感じだった。俺、そこで二十年暮らしたんだから」と猎猎は答えた。

小鹿は頷き、真剣な顔で言った。「さっき、なんで俺に挨拶しなかった?」

「え?」猎猎は一瞬戸惑い、思い至って小鹿に一礼し、大きな声で言った。「小鹿、お前も来たんだな!」

「それでいい」と小鹿は頷き、蘇允墨に言った。「おっさん、ちゃんと子供を教育しろよ。」

猎猎はこっそり白目をむいた。

蘇允墨は猎猎の肩を抱き寄せ、「ふざけるな、これは俺の嫁だ」と言った。

「ふざけんな!」猎猎は彼を突き飛ばし、こう罵った。「じいちゃんは名も性も変えねえ。お前が俺を女扱いしたら、」彼は言葉を切った。

「したら?」

「お前を嫁なしにするぞ!」

皆がどっと笑った。

*

猎猎は前に出て凛凛の袖を引っ張り、小声で話した。

小鹿はさりげなく猎猎の手を外した。

猎猎は口を尖らせ、小声で言った。「お前、ちっちゃい嫉妬深いやつ。」

「何だって?」

猎猎は蘇允墨の後ろに隠れて黙った。

「さっきは『じいちゃん』とか言ってたくせに、ビビったのか? お前、ほんと見栄っ張りじゃないよな」と小鹿がからかった。

「俺は妖界一の雑魚だ。面子なんかいらねえよ」と猎猎は言い返した。

*

蘇允墨は小鹿と夕飯を食べ、猎猎は凛凛にトランプを教え、四人で笑いながら話して夜遅くになった。

侍女が隣の部屋を用意してくれた。

「おっさん、じゃあ行くよ」と小鹿は言い、凛凛を押して部屋を出た。

「待て」と蘇允墨が小鹿の袖を掴んだ。凛凛が隣の部屋のドアを開けて入るのを見届け、こっそり二冊の本を渡した。

「何だこれ?」

「春画だ。水妖の大人に開眼してもらうために。」

小鹿の顔が一気に真っ赤になり、慌てて突き返した。「こんなことおっさんに心配されなくていい! 早く持って帰れ!」

「明日、猎猎の姉貴が来てこれ見つけたら、アイツやばいんだよ。頼むから持っててくれ。」

小鹿は眉をひそめ、渋々本を懐にしまった。

蘇允墨は小鹿を二歩押し出し、すぐに部屋のドアを閉めた。

小鹿は突然気づいた。皆が妖術を使えるのに、本なんて一振りで消せるはず。蘇允墨は絶対わざとだ。

ああ! 小鹿は心の中で叫んだ。これを受け取った時点で、もう清らかじゃいられない。自分は汚れてしまったと感じた。

*

凛凛は部屋を二周し、小鹿が入ってきたタイミングで言った。「大殿でちょっと座禅する。君は先に休んで。」

「なんで大殿?」

「句芝大人の修行用の玉台を試してみたい。」

小鹿は頷き、「早く戻ってきてよ」と言った。

「分かった。」

*

凛凛は廊下の突き当たりまで滑るように進んだ。暗門はすでに閉ざされていたが、彼は立ち止まらず、門に近づくと体が透明になり、数万の細かい水滴に分解されて壁をすり抜けた。向こう側で水滴は透明な人型に集まり、元の姿に戻った。

彼は玉台の前に立ち、登らずに霊力を凝らして玉の表面を軽く探り、その霊力の反応を感じ取った。

*

その時、奪炎は第二層の地宮で第三層の結界入口を研究していた。彼は顔を上げ、凛凛のいたずらに気づき、微笑んだ。「本当にやんちゃな子だな。」

挿絵(By みてみん)

*

小鹿はドアを閉め、ベッドの縁に座り、深呼吸した。こそこそと懐から二冊の本を取り出し、表紙を見た。一冊には『媚合春冊』と書かれていた。適当に一ページを開くと、男女の交合図に心臓が跳ね、慌てて閉じて脇に置き、もう一冊を手に取った。

「『桃田広記』?」彼は書名を読み、妙な名前だと思ったが、突然そのイメージが絵のように頭に浮かび、極めて猥雑で生々しかった。桃田? 彼は心の中でつぶやいた。ああ、俺はもうダメだ! かつての純粋で美しい日々には戻れないと内心で絶叫した。

彼は一ページ目をめくり、文章だったので読み始めたが、数行でバタンと本を閉じ、顔は真っ赤、呼吸は乱れた。

頭を仰いで何度か大きく息を吐き、落ち着いてから本を再び開き、文章を飛ばして後ろの絵にたどり着いた。絵は生き生きとし、細やかな筆致で動作や表情がリアルに描かれ、微かに開いた唇からは淫靡な声が聞こえてきそうだった。小鹿は全身が熱くなり、下半身に春の潮が押し寄せ、知らず知らずのうちに反応してしまった。

*

その瞬間、ドアが軽く動き、凛凛がふわりと入ってきた。小鹿は慌てて寝返りを打ち、枕の下に本を押し込み、平静を装って先手を打った。「早かったな?」

凛凛は小鹿の奇妙な様子に気づかず、「あの玉台は修行用じゃない。第二層の結界の入口だ」と言った。

「句芝大人が家にこんな結界をいくつも設けるって、どんな宝物を隠してるんだ?」小鹿は平然を装いながら、枕の下に手を伸ばし、呪文を唱えて本を二袋の飴に変え、ようやく少し安心した。

「水滴を入れて調べたけど、中は空っぽだった。書案が一つあって、祭祀用の銀の蓮花高盞に白い欠片が入ってるだけ。なんだか分からない。」

「それって良くないよね。隠してるものなら、勝手に調べるべきじゃない。」

凛凛は頷き、「それも人間のルール?」

「うん。」

「じゃあ、もう調べない。寝よう。」

*

凛凛はベッドに登ろうとし、小鹿の背を叩いてどいてくれと合図したが、小鹿はまだ下半身が落ち着かず、動けなかったので、ふてぶてしく言った。「俺の上を這ってよ。」

これぞ願ったり叶ったり。凛凛はゆっくり小鹿の上を這い、ついでにお尻を何度も摘んだ。

小鹿は心の中で苦悶した。小祖宗よ、なんでこんな時に誘惑するんだよ?

**

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ